「鼓動」2010年4月1日
桜に出逢う
昨春のことである。車が福岡県の中央部にある仲哀トンネルにさしかかる頃、突然視野に、目を疑うほどの景色が飛び込んできた。トンネル入り口の山麓斜面のひとところが一面桜色に染まっているのだ。どうやらそれは仲哀公園の桜のようだった。つづら折りの山道沿いの駐車場に車を止め、徒歩でゆっくりと峠道を登ると、折しも満開の桜だ。くねくねとした山道の両側を、桜並木が連なり、今見頃となって咲き満ちている。千本を越すだろう桜の大半はソメイヨシノだが、ところどころに山桜も混じっている。
全く風のない曇り空の午後、枝先まで咲きそろった桜が、影をつくって微動だにしない。しばらく佇んで惚けたように万朶の桜を眺めていると、まるでここだけは時間が止まった感がする。漲る花の気配があたりを圧して空気さえ濃密に感じられるほどだった。
山を歩きながら思いもかけぬ桜との邂逅にうれしさがこみ上げてくる。いっときこうして身も心も桜で満たしたいと言う思いに浸る。
それにしても風はそよとも吹かない。わずかに幾片かの花びらが音もなく舞い散ってゆくだけだった。(IK)
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