原作者の
村上もとか(ちなみに男性)は、アラサー世代ならテレビアニメでよく知っている
『六三四の剣』を生み出した人物。
他にも昭和初期の日本と中国を舞台にした歴史マンガ
『龍-RON-』など手がけた作品は数しれず。
いずれも入念な下調べに裏付けされた緻密な構成で、人生を熱く描いている。
けして派手な漫画家ではないのだけれど、今考えれば
超がつくヒット作を作れる作家なのだ。
そんな村上作品の中で、
『仁』のように「タイムスリップ」の要素を加えてきたのにはファンも戸惑ったはず。

ある部分でリアルさが魅力だった村上作品に一見“荒唐無稽”と思える設定が登場するのだから。
タイムスリップものと言えば
「ドラえもん」や
「タイムボカン」が真っ先に思いつくように、どちらかというと“子供向け”なイメージもある。
だが、『仁』は違う。“幕末に現代医学を修得した医師が存在したら”という設定を、真剣にシミュレーションしている。
もしご都合主義だけのタイムスリップなら、直らない病気を現代医学がバッサバッサと解決してヒーローに、なんていう陳腐なものになるだろう。

だけど、主人公の
南方仁は歴史を変えてしまうかもしれない自分に苦悩し、医学の限界に直面し、と苦悩しながらも前へ進む。
そこに
人間ドラマとしての深さと温かさを感じる。
村上もとかという人は、ヒューマニズムに集約されるのだと改めて気づかされる。
買い物もすっかりネットが当たり前の現代、漫画の南方仁のように苦労して医療器具をそろえたりする姿はなんだか懐かしい。意外な癒し効果があるのかもしれない。