「鼓動」2010年2月3日
アイルランドの短編小説
先だってアクロス福岡でケルティックフェスティバルが開催された。展示パネルではアイルランド出身の作家についても紹介されていた。興味も出て、後日『アイルランド短編小説選』(岩波文庫)を読んで、久しぶりに読書の楽しさを味わった。
アイルランドと言えば、ヨーロッパ最後の田舎と言ったイメージはあるが、なるほど、この地にはルネッサンスも宗教改革も産業革命もなかったし、中産階級の勃興もなかった。経済的社会的なダイナミックな成熟過程を経ていない地域で、リアリズムの長編小説は発達せず、個人の「生」を物語る短編小説が独自に発達した、と短編選の解説にはあった。
また、アイルランドには昔から語り部の伝統が存在し、神話伝説や驚異譚などをはじめ、物語やエピソードを肉声によって語るという、その系譜が短編の世界に色濃く残っていることも指摘されていた。
土の匂い、宗教的確執、伝承と奇譚・・15編の短編小説は、風土と結びついてアイルランド特有の文学的な香りを醸し出している。その魅力は日本の小説ではちょっと味わえない。(Ik)
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