「鼓動」2010年2月4日
三千世界のカラス

回天の壮挙半ばに倒れた晋作は、実に多彩な人物で、よく学びまたよく遊びもした。良く知られた自作の小唄には次のようなものがある。
三千世界の烏を殺し、主と朝寝がしてみたい。
ここでは、カラスが悪者になっているが、カラスというのは早起き鳥の中でもずば抜けた最右翼で、日の出の40分ほど前に巣を飛び立つという。なるほど、ならば晋作の小唄も少し合点がゆく。世界を沈黙させ、お前と一緒にいっときのまどろみを楽しみたいという歌である。
以前釜山を訪れた際、釜山の公園に一羽のカラスがいないことに気づいた。玄界灘を挟んでそれほど福岡の気候が異なるとは思えない。なぜだろうと不思議に思っていたが、昨年福岡に来た釜山の若い演奏家と食事をする機会に女性バイオリニストにそのことを尋ねてみた。
「きっと食べたんですよ」
彼女は平然と言う。彼女の前の皿には手羽先が並んでいた。
「そう、たしかに食べたと思います。栄養があるそうです。それでカラスはいないんですよ」
回りの韓国側のスタッフも一様にうなずいた。
日本ではちょっと考えられない気がした。(Ik)
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