「鼓動」2010年8月14日
インターネット時代の贈り物

あの頃の自分は、恩師の大きさ、ありがたさ、自分の至らなさも、皆目わからない不甲斐ない若者だったと思う。自分の学生時代を思い起こすと冷や汗が出る。
そんな積年の不義理を詫びる思いで、記念になるものをお贈りしたいと思った。
中世の宗教画を好まれていたことを思い出しいくつか画廊を廻ってみた。備えつけのカタログから古今東西の名画を選べば、取り寄せて額装してくれるのだが、宗教画はレアものなのか点数も少なくコレといったものが見つからない。
時間もかかりそうだ。
思いあぐねてインターネットに適当な情報はないか探してみると、ありとあらゆるポスター、絵画を取り扱ったサイトに行き当たった。その数50万点。好きな画材を選び、画面上でサイズ、フレームの色を選ぶことができる。目当ての宗教画もかなりの品ぞろえだ。
ストレスを感じることなく、注文を完了し、発送手続きに移行して初めて、このサイトがアメリカに本拠地を持つサイトであることがわかった。10日後に送られてきた品物はきれいに梱包され、額装を担当してくれたアメリカ人男性のサインがあった。
面白い時代になったものだ。
中世の宗教画が、21世紀のアメリカの、ポスタ・絵画販売サイトで額装され、日本の福岡に住む研究者の書斎を飾る。
お膳立てはインターネット。不肖の弟子が、我が師の恩に頭を垂れるまでには、それ相応の年月を要したが。(M)