「鼓動」2010年8月27日
空飛ぶヴァイオリン
鮮烈な色彩と幻想的作風で知られるシャガールの絵には、ヴァイオリン弾きなどの楽士やサーカスの芸人達が何度も繰り返し登場する。ユダヤの街で育った幼いシャガールには、彼らがいつも身近な存在であったようだ。楽士のみならずヴァイオリンやチェロといった楽器そのものも良く描かれている。
音楽は、シャガールにとって、夢を奏でる美しい玉手箱のような存在だった。
中には「空飛ぶヴァイオリン」や「空飛ぶチェロ」もある。
空を飛ぶことは、そのままシャガールの幸福感の象徴で、夢想的な彼の性向を良く表し、数多くの場面で描かれている。ニューヨークのメトロポリタン歌劇場の壁画も、パリのガルニエの天井画も、シャガールによるものと言うのだから、「シャガールと音楽」というのは、その関係性の強さがうかがえる。
2年前に熊本県立美術館のシャガール展にあった「『魔笛』の思い出」。
そこには、空飛ぶヴァイオリンとともにモーツァルトの顔もあった。
『魔笛』の舞台美術を担当したシャガールが描いたその絵は、モーツァルトを愛した一人の天才画家の限りないオマージュだった。
さて、そのシャガールが今年10月に福岡市美術館にやってくる。
「シャガール ロシア・アヴァンギャルドとの出会い~交錯する夢と前衛~」は、パリのポンピドー・センター所蔵のシャガールの名品とロシア前衛芸術の巨匠達の作品の同時展示となる予定だ。シャガールファンには楽しみな展覧会である。(IK)
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