「鼓動」2010年11月13日
ザクロ
福岡市天神の「新天町」商店街のフルーツ店を覘いたら、立派なザクロが並べてあった。赤い球形のごつごつとした果実は、まだ裂けてはいないが、ずっしりとした存在感があって、秋の日差しのあたる窓辺にでも置いたら、静物画の格好の素材になりそうだ。セザンヌが描いた静物のタッチを連想した。英語でガーネットは柘榴(ザクロ)石だけど、柘榴の果実にびっちりと詰まった
そのひとつひとつの種子のその色つやは、ガーネットよりもむしろルビーがふさわしい。
ギリシア神話には、ザクロが登場する。
大地の神デーメテールの娘ペルセポネーは、ある春の夜明け、野原で花を摘んでいたらいきなり地面が裂けて躍り出た冥界の神ハーデースに拉致される。
母デーメテールは娘を探して老婆になって地上をさすらうのだが、この女神の悲しみのために穀物は芽吹かず大地は荒れ果てる。このありさまを見たゼウスは、冥界へ使いを送りベルセポネーを母のもとに返すようハーデースを説得する。
ハーデースはゼウスの言葉に従うが、ペルセポネーを手放す前に一個のザクロを食べさせる。が、冥界の闇の中でルビーのように輝くザクロの実を数粒食べてしまったために、1年の3分の1はハーデースの妃として冥界で暮さねばならなくなる。そして春には再び母のもとに帰り冬が来るまで地上で暮すことになる。
ギリシア神話の中のこの話には、命の循環の物語が潜んでいる。
ザクロの種皮は甘酸っぱい液に富むが、一粒一粒食べるのは結構面倒だと感じる。そのため次第に食べる機会を失ってしまっている。(IK)
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