「鼓動」2010年11月14日
反骨の士
その昔、アマテラスオオミカミの孫にあたるニニギと言う神様が、日本統治のために高千穂の峰に降り立って、間もないころのことだ。アメノウズメという女神が、海に棲む大小さまざまの魚を集めて「お前たちはニニギノミコトにお仕えしますか」と尋ねたことがあった。そのとき多くの魚たちは「お仕えします」と声を揃えて答えたのに一人ナマコだけが返事をしなかった。なぜかというと、ナマコには宮仕えなんか性に合わないとわかっていたからだ。ところが、女神はナマコが黙っているのでたいそう腹を立て
「この口や、答えぬ口」
と怒鳴りつけるや、小刀でナマコの口を切り裂いてしまった。それ以来ナマコの口はあんなに裂けた、と『古事記』には書いてある。
体制になびかない反骨精神。ナマコは、記録に残る最初の反骨の士であった。
反骨精神もまた太古の時代から脈々と受け継がれる。昨今大河ドラマで人気の坂本竜馬もしかり、明治以降多数の愛読者を持つ国民的歌人の石川啄木もしかりである。啄木の歌に次のような歌がある。
人がみな
同じ方角に向いて行く
それを横より見てゐる心 石川啄木
啄木の歌には、単なる大衆性だけではなく、根っこに反骨の精神が宿ってる。
27歳で亡くなった啄木が『時代閉塞の現状』を書いたのは、死の2年前1910年のことだ。いまからちょうど100年前である。(HR)
新型コロナウイルス感染症対策が各地で実施されています。イベント・店舗の運営状況は公式サイト等でご確認ください。
















