アジアンビートは、文章を通じて世界と私をつないでくれる扉だ。
世界のいろいろな場所で「櫻井さんの連載読んでます」と話しかけられるが、そんな一言一言が世界を文化外交で周り続ける私の大きなエネルギーになる。アジアンビートの読者が、私の背中をいつも押してくれるのだ。これまで私が文化外交活動をした国は27カ国。100を越える国・地域に読者がいる。まだ4分の1にも行けていないことをとても申し訳なく思っている。

アジアンビートの連載では、世界というフィルターを通して、私自身も「日本」という国を見直させてもらっている。日本の何を世界のみなさんはすばらしいと思ってくれるのか、原稿を書きながらその本質を自分自身に問いている。
ニッポンという国は、世界でいちばんユニークな国だと私は思っているが、アジアンビートの読者のみなさんもきっと同意してくれるのではないだろうか？
日本という国は、はるか昔からもの作りに真摯にこだわり、日本にしかないものをたくさん創り出してきた。世界に売り込もうと思わず、世界の消費者のマーケティング動向を調査してなどということもせず、自分たちが創りたいものを、意志をもって作ってきた日本のクリエイターたち。飛鳥時代も江戸時代も現代も、ものづくりの本質は変わっていない。
そんな日本のすばらしいもの、面白いものを、世界のみなさんがインターネットの普及のなか自分たちで見つけてくれた第二次ジャポニスムとも言える現代。文化という分野におけるインターネットというジャンルの可能性を切り開いたのも日本なのではないだろうか。
私は、インターネットを通して世界と日本をつなぐ架け橋としてのアジアンビートで連載させてもらっていることをとても光栄に思っている。
だから、アジアンビートの本拠がある福岡という街は、東京生まれの私にとって第二の故郷のような存在だ。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

2015年9月12日

櫻井孝昌

▲2015年4月。メキシコ国立自治大学(UNAM)で講演