「鼓動」2010年11月18日
ローヌ川の星月夜
ビンセント・ヴァン・ゴッホのアルル時代。1888年2月に南仏アルルを訪れたゴッホは、ゴーギャンとの共同生活を夢見て「黄色い家」に住み始めた。太陽も星も輝くこの地で、ゴッホは旺盛な創作意欲で200点近くの作品を制作している。吉永小百合が登場する液晶テレビCMで有名になった「夜のカフェテラス」もこのアルル時代に制作されている。ゴッホはガス燈からこぼれる明りをたよりに、たぶん自らも明るい気分で、夜のカフェテラスを描いた。福岡市天神のカレー屋「カルカッタ」の壁には「夜のカフェテラス」の複製写真が掲げられていた。何度も通ううちに、自然と絵を覚えてしまった。カフェの明かりは戸外にあふれ石畳を照らしている。頭上には星たちがさんざめいている。けれど、その星がどの星なのかは特定できなかった。
この「夜のカフェテラス」の後に描いた「ローヌ川の星月夜」にも星空は広がっている。「ローヌ川の星月夜」は、1888年から89年にかけての作品だ。この夏、東京でのポスト印象派展で初めてこの絵をまじかに見ることができた。星明りのもとで、手前には腕を組んだ夫婦二人が、船から降りて岸から離れるように歩いている。川向うには街明かりが広がり、川面にその明かりが伸びていた。豪華な星空には、明らかに北斗七星と分かる星たちがが描かれていた。
ゴッホは、土手に座り、帽子にロウソクをくくりつけてこの絵を描いたという。はるか遠く瞬く星たちの圧倒的な存在感。ゴッホは強いあこがれを抱きながら瞬く星たちを描いたのだろう。まるで、『銀河鉄道の夜』の主人公ジョヴァンニのようだ 。(IK)
*九州国立博物館では「没後120年ゴッホ展」を2011年正月から開催予定である。
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