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櫻井孝昌(Takamasa Sakurai) のJAPAN! JAPAN! JAPAN!

第2回 カワイすぎる南京の大学教師の人生を変えたのは「スラムダンク」とセーラー服

2010年1月から中国での文化外交活動を本格化させて以来、計14回そこに足を運ぶことになった。中国での友人や仲間も増え、滞在中日本人に一人も会わないなどというケースも増えてきた。だからこそ逆に日本を強く意識することができるとも言えるだろう。
この4月に招聘された、南京信息工程大学(Nanjing University of Information Science & Technology)行きも日本人に会わない旅だった。同大学に2008年新設されたMedia & Art College(開学は2009年)での講義と客員教授職に就任するための南京行きだった。
同カレッジには、手描きアニメーション、3Dアニメーション、イラストレーションを学ぶアニメーション学部と、広告、展示映像、ゲームを学ぶデジタルメディア学部がある。全国から集まってくる学生数は400名。うち3分の2が女子学生。新設のカレッジらしく、教員陣が若いことも特徴的だった。中国にはアニメーションを学ぶ4年制大学がたくさん存在する。これは日本との大きな差だ。アニメーション産業の育成を国策として進めている中国の方針が反映されていると言えるだろう。
南京信息工程大学では、学生に講義する前に、教員陣の質問に別途答える時間が設けられた。このとき出た質問のいくつかは、日本と中国のアニメ製作環境の差を象徴するような質問で、とても興味深いものだった。アニメの権利構造、手描きアニメとCGアニメの差、商業アニメーションとクリエイティブといった質問に関する私の回答に、真剣な表情で聞き入る姿が印象的だった。
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▲中国で人気の「ViVi」と「mina」どちらも愛読している
アニメ―ションの作画等の教鞭をとり、学生への講義では私の通訳もしてくれた宋玉さん(29歳)が日本のアニメを知ったのは、小学2年生のとき「一休さん」だったそうだ。その後、中国中で一大ブームとなった「スラムダンク」に中学生のとき夢中になった宋さんは、日本語に興味を持つ。大黒摩季が歌うエンディングテーマ「あなただけ見つめてる」を日本語で歌っていたそうだ。
この歌や「スラムダンク」の主題歌BAADの「君が好きだと叫びたい」は中国で本当によく知られているアニソンだ。20歳~30歳前後の中国人で、日本やアニメに興味を持っている人に尋ねればそれは自ずと明らかになるだろう。アニソンは日本と日本語を発信する強力な武器でもあるのだ。
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▲大学の教室で。
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▲学生からも大人気。「先生カワイイ!」
「スラムダンク」に夢中になった少女時代の宋さんがあこがれたのがセーラー服だった。アニメを見ながら、うらやましい、着てみたいという想いを募らせた宋さんは、おばさんにセーラー服を作ってもらい、学校指定のジャージの下に着て通学したという。学校に着いたら、すぐにジャージを脱ぎ、セーラー服で授業を受けたという。
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▲最近はまったアニメは「男子校生の日常」
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▲教え子(22歳)と。今日はセーラー服で授業に。珍しいことではないそうだ。
このころデッサンを習い始めたのも「スラムダンク」の影響だった。将来の夢は教師になること。優しくて、きれいだった担任の先生のような教師になりたかった。
「絵を描くことで教師になるという夢がかなった私は、いまとても幸せです。教え子たちもよい子たちばかりです。もっとも私は学生にちょっと甘すぎるかもしれませんけど(笑)」
女子学生たちに宋さんについて聞くと、
「先生がいちばんカワイイ! 大好きです」
と嬉しそうに話してくれた。アニメ少女だった宋さんは、高校生のとき、南京で初めて開催されたコスプレ大会にも出場している。
「『るろうに剣心』の巴のコスプレをしました。このときは4人しかエントリーしておらず、街をコスプレ衣装で歩くのはとても勇気がいりました。でも、たくさんの人たちが写真撮影やサインを求めてくれたんです!」
高校のときは、日本に行った従姉に買ってきてもらったセーラー服を着て学校に通っていたという宋さん。日本のアニメへの想いは筋金入りなのである。
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▲Media & Art Collegeの先生たち。若い!
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▲展示された自作を前に。
大学に入ると日本のファッション誌にも夢中になったという。
「小さいときからアニメの影響で、日本が好きでした。日本は夢のある国だと思っていました。いまでも日本に留学するのが夢ですよ」
同学では教員の研修留学も推奨されている。近い将来、彼女が夢を実現し、いまの日本を南京の大学の学生たちに伝えてくれるといいなと思った。
「毎日アニメを観るか、ドラマCDを聴いて日本語の勉強をしています。アニメの日本語はとても勉強になりますよ。それにアニメを観ていないと学生の話についていけないですから(笑)」
宋さんと一緒に大学で再び講義する日が楽しみでならない。
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執筆者:櫻井孝昌氏プロフィール 

櫻井孝昌.jpg作家、ジャーナリスト、事業企画・イベントプロデュース等の仕事とならび、世界23カ国延べ98都市で講演やイベント企画、ファッションショーといった「ポップカルチャー文化外交」活動を実施中。外務省委嘱のカワイイ大使プロデューサー、アニメ文化外交に関する有識者会議委員等も歴任。著書(発売順)に『アニメ文化外交』(ちくま新書)『世界カワイイ革命』(PHP新書)『日本はアニメで再興する』(アスキー新書)『ガラパゴス化のススメ』(講談社)『「捨てる」で仕事はうまくいく』(ダイヤモンド社)がある。
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