「博多山笠PORTER」を手がけたのは、日本を代表するカバンメーカー「吉田カバン」企画部のリーダーであり、日本のトップクリエイターでもある桑畑晃さん。今回の博多山笠PORTERについて、完成するまでの経緯とその思いをうかがった。
アジアンビート:(以下ab)今回、福岡の伝統文化の中から山笠をテーマにしようと思った理由は何ですか?
桑畑さん:前回の博多献上PORTERを作った時から、文化として福岡に根づいたものを、きちんと形に取り入れたいなと思っていて。ただ(素材同士)何かと何かをくっつけたという表面的なことではなく、中にもう一歩踏み込んだものを作りたかったんです。
それで今回、福岡の文化を考えた時に「山笠」がキーワードとして挙がってきて。山笠って祭りでしょ?それで"祭りの時に持って行けるバッグ"を作ろうってなったんです。それで調べていくと、山笠の男たちが持ち歩いている信玄袋(下写真)にたどり着いて・・・そうやって、今回の形の原案ができました。
ab:完成したバッグを見ると、信玄袋からずいぶんと形が変わった感じがしますが?
桑畑:もちろん信玄袋をイメージして作ってはいます。だけど、それをそのまま作っても今の人は使いづらい。祭りの時ってできるだけ軽装で動きたいじゃないですか?写真撮ったりとかするし。そうなると、財布と携帯とカメラだけみたいな、最小限のものが入れられて、手ぶらでいられるカバンにしようと思ったんです。
ab:"手ぶらで"というのがいかにも男らしくて、男の祭りである山笠にもシンクロしますね。
桑畑:"手ぶらでいられる"って考えた時にロッククライミング用のバッグが思い当たりました。ロッククライミングは、頑丈な生地じゃないと岩にぶつかって破れてしまうし、岩場につかまらないといけないから、カバンの中身の出し入れは、簡単に片手でできないとだめ。そういうところが男くさいなって。山笠の男たちのイメージにぴったりだって思ったんです。それで、このカバンにも外側には、ストロンテックスっていう、車のエアバッグにも使われている軽くて丈夫なものを使いましたし、片手で紐をひっぱるだけで簡単に開け閉めできるようにしたんです。
ab:そのほかに山笠らしい特徴はありますか?
桑畑:内側には、山笠の法被や信玄袋で使われている久留米絣を使用しています。ペンを入れたり携帯を入れたりするポケットを並べていて、深さもそれぞれ違うんですよ。
ab:表の頑丈な生地やカバンの使い方は男らしく、中の美しい久留米絣や細やかな作りは女らしい。まさに山笠の男と、それを陰で支えるごりょんさん(奥さん)のイメージですね。
桑畑:そうですね。こういった、表面だけでなく、山笠のスピリットを形にできたことに満足しています。形は小さいですが、デカいものができたな、と。そして伝統ある山笠に公認され公式グッズになったことで山笠の魂が入り、「本物」になったことがとても嬉しいです。
この博多山笠PORTERを若い人に持ってもらって、もっと伝統文化に興味をもってもらいたい。そうして若い世代が伝統文化を外へ発信していくと、日本の伝統文化は残っていくんだと思います。(”吉田カバン”の”吉”の字は、土に口です。)
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