「鼓動」2010年3月2日
善と悪の戦い

バリの舞劇の忘れがたかり
小島恒久
歌の作者は、バリの舞劇を観て、善と悪が戦い、悪は必ず生き残ってゆくしたたかな世界観に、強い印象を受けている。
そんな歌を読み、作者の思いに寄り添う一方で、バリ舞劇とはまさに対極にあるような『ニーベルンゲンの歌』は、さて、どんな叙事詩であったのか、思い起こしたりもした。
五世紀におけるフン族の王アッチラのヨーロッパ侵入と、それによるブルグント王国の滅亡。さらにジークフリート伝説が加わって12世紀の英雄叙事詩『ニーベルンゲンの歌』が出来上がっている。
無双の英雄ジークフリートは、請われるままに、ブルグント王国グンデルとアイスランドのグルーンヒルトの結婚の成立を策略で助ける。が、グルーンヒルトの猛烈な恨みを買い、ブルグランド王家の重臣ハーゲンの姦計にあって死ぬ。ジークフリートの妻クリームヒルトは夫の復讐を誓う。
深い運命観に支配され、戦いに暮れ、累々と死骸だけが横たわる悲劇性。それは文化的洗練によっても喪われることのない民族の根源的な力を感じさせるものがある。
アジア人はこんな悲劇の物語は書けそうもない。(IK)
サイトやコラムに対する皆さんの率直なご意見をお待ちしています。
→ご意見・ご感想記入フォームにリンク
→ご意見・ご感想記入フォームにリンク