「鼓動」2010年3月24日
白磁の人

「マグノリア」。木蓮や辛夷などの類を総称してそう呼ぶ。李朝白磁の色合いは、まさに「マグノリア」の色なのだ。ツンとすました高麗青磁の気品のある美しさに比べたら、李朝白磁は素朴で温かみのある無垢の美しさだ。なんともやわらかくそしてまろやかだ。
李朝白磁の美しさが近代の日本人に初めて認識されたのは大正時代だから、たかだか100年だ。民芸運動の柳宗悦(ムネヨシ)の協力者である浅川伯教(ノリタカ)・巧(タクミ)の兄弟は、朝鮮の地にあって、古道具屋に並ぶ白磁の壺に朝鮮民族特有の美意識を発見する。江宮隆之の小説『白磁の人』はその浅川巧の評伝である。日朝関係史に深い影を落とした時代。朝鮮を愛し、朝鮮人から愛された浅川の生涯は、日韓両国の人々にもっと知られてよいと思う。
ところで、昨年3月に、この「白磁の人」の映画化が発表され、今年の3月には公開されるという話だったのだが、いまだ公開情報について聞き及んでいない。(IK)
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