「鼓動」2010年3月26日
ひなしろの獅子舞

中でも、にらみ合って大きく口を空けた獅子が、互いに小刻みに脚を踏み鳴らし、調子を揃え、高らかに歯を合い鳴らす動きは、単純だが見るものに興奮を与える。双方の獅子が、見事揃って、歯を高く鳴らしたならば、会場の拍手と歓声がわき起こる。
これはある意味芸能の様式化が行われる以前の古い形態なのかもしれない。聞けばそのルーツは台湾にあるという。獅子の胴体や脚は褐色のシュロで編んである。猛り狂う獅子の荒々しさ。その獅子の毛並がゆさゆさと激しく揺れるだけで、まるで獣と向き合ったかのような緊張感が伝わる。バーバリズムを目の当たりにする高揚感。観客は舞台の獅子の猛々しい動きを追いながら、ときおり見せる双方の獅子たちによる妙技に魅せられるのだ。
さらに、その獅子たちが、舞台から観客席に降りてきて、会場を巡りながら次々に観客の頭を飲み込むような所作をすると、会場はそのつど大きな笑いと歓声に包まれる。
地域の伝承芸能は保存活動に取り組む方々によって支えられる。が、その方々に聞いてみると伝統芸能こそ自分たちを支えているんです、との答えが返ってきた。(IK)
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