「鼓動」2010年4月5日
百三十七億年の孤独

その田(ティエン)さんが谷川俊太郎の詩に出逢ったのは日本語学校を終え天理大学で学んでいたときだ。
<二十億光年の孤独>
人類は小さな球の上で眠り起きそして働き
ときどき火星に仲間を欲しがったりする
「や、これ、面白い。中国にない詩だ」
そう感じた田さんは谷川と会い、彼の詩の中国語訳に取り組み始める。田さんの翻訳は新聞やインターネットに載って谷川を一気に中国に押し出し、編んだ詩集は、05年に中国で賞を受賞した。
谷川俊太郎の詩のタイトル「二十億光年の孤独」は、出版前に天文学者エドウィン・ハッブルが提唱した宇宙膨張説に由来する。
1929年に宇宙は膨張していると発表したハッブルは、50年代の初め独自の研究と観測によって宇宙の始まりを20億年前と割り出していた。最も遠い天体は20億光年彼方にあった。谷川は広漠たる宇宙の中の人間の孤独を「二十億光年の孤独」と表現した。
ハッブルの発見からすでに半世紀以上が経って今や観測も理論も格段に進歩している。現在考えられている宇宙の年齢は137億年だ。が、宇宙に知的生命体はまだ発見されてはいない。人類はいまだ「百三十七億光年の孤独」に中にいる。(IK)
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