「鼓動」2010年4月9日
文化産業大国に向けて(2)

83mもある長いエスカレーターを上り、さらに上へと続く螺旋状のフロアは、洋服、雑貨、おもちゃなど、週末ともなれば多くの若者であふれている。
このフロアの一角に香港大手チェーンCDショップがある。J-POPコーナーも立派に設置されている。品揃えも豊富だ。
日本でも大人気のアーティストのCDを手にとり、売価を見ると驚くほど安い。1枚150香港ドル前後(約1,800円)、それでも中華圏のアーティストが100香港ドル前後(約1,200円)で売られていることを考えると少々お高い。
香港でのCDビジネス、日本との価格差が倍近く、しかも、人口が日本の20分の1の香港では、1万枚売れれば大ヒット、5万枚も売れるとミリオンヒットと言われる。試しに、日本で売価3,600円のCDが100万枚売れると36億円の売上に対し、香港で同じ価値であった場合、売価1,800円×5万枚=9千万円である。
しかし、ここ香港では、CDは日本と比べて安くても、かたや日本人アーティストのライブは1席20,000円ほど、日本の倍以上の金額である。
日本の大手プロダクション代表からは、早くからアジア市場に攻めていったが、実際は、ライブ・エンターテイメント以外のビジネスは成立しにくいと話を聞いた。今は、様子をみているとのこと。
それでも、RTHK(香港国営放送局)のJ-POP番組プロデューサー・ロビン氏のレポートにあるように、香港では、ワールドミュージック部門と独立してJ-POP部門が設けられている。世界と日本が肩を並べて競い合っているのである。
この発信力を利用しない手はないのだが、流通、小売を現地資本、あるいはHMV、Tower、amazonなど海外資本に依存する状況下では、物価価値を合わせざるを得ないのであろうか。
最後のアウトプットを海外勢に持って行かれ、もったいない気がする。(K)