「鼓動」2010年4月15日
Crystal Blue

初期の大江さんは、石原慎太郎さんや開高健さん、やや先行しての安部公房さんたちと同様、シュールな作家のひとりだったが、大江作品の持つ独特の世界は、その容貌からは想像できないほど強烈だった。
村上龍さんが芥川賞を受賞した際、選考委員の意見が分かれ、最終的には受賞が決まったが、大江さんのコメントは「意見が分かれる作品・作家であるからこそ、世に問う意味がある」確かそんな内容だった。
小説家は、人間や時代に鋭利に切り込む。その後の村上さんの活躍は、まさに大江さんの指摘通りだ。
村上さんの受賞作「限りなく透明に近いブルー」を、今の時代に置き換えてみると、30年以上前の小説とは思えないほど、21世紀の今に切り込んでいる。
刺激的内容だが、結末に披瀝されるピュアな感受性こそ村上さん自身だと思う。(O)