「鼓動」2010年6月20日
超新星

超新星とは、最晩年の恒星が大爆発を起こす天文現象を言う。夜空に突然明るく輝く星が見えることからそう呼ばれる。
ベテルギウスは、地球から600光年離れているから、実際爆発があっても、その光が地球に届くのは600年先となるが、すでに爆発している可能性がないわけではなく、もしそうであるなら満月の明るさほどの光が見えるはずだ。
戦前、アメリカのある天文雑誌に、一人の日本人のアマチュア天文家の投稿論文が掲載された。
それは鎌倉時代の歌人藤原定家の日記『明月記』に記された天文記事の紹介だったが、その中の「客星」の記事に欧米の天文学者たちは色めきたった。客星とは、彗星や新星のことで、定家は過去の客星出現例8例を記述していた。
その一つが、1054年4月中旬以後オリオン座の東の牡牛座ゼータ星付近でひときわ輝き、木星ほどの大きさだったという内容だった。牡牛座ゼータ星の近くといえば、「かに星雲」が知られていた。
この論文の掲載に先立つ6年前、天文学者ハッブルは、かに星雲の膨張の様子から膨張速度を逆算し、およそ900年前にはその原初天体が一点に集まっていただろうと発表していた。『明月記』に記された1054年の客星は、この「かに星雲」の誕生時の姿ではないのか、天文学者たちの注目を集めた理由はこのためだった。
実際、『明月記』の客星は超新星であり、かに星雲はその残骸だったことがその後明らかになった。
遠くない将来、ベテルギウスの最後の光を、眼にすることになるかもしれない。(IK)