「鼓動」2010年7月1日
初夏の渓谷へ

父からフライフィッシングの手ほどきを受けた二人の息子ノーマンとポール。ともに長じて優れた釣りの腕前を見せるようになるのだが、二人の釣りの仕方はまるで違う。観るものは二人の辿る運命さえも予感させられる。
時は過ぎ、久しぶり再会した父と子は、懐かしい渓谷へ出かける。ポールは岩陰に狙いを定めてフライラインを緩やかに飛ばして行く。そのシーンはさながら映像詩のようだ。
水面に漂うフライがいきなり水中に引き込まれる。強い引き、水上に跳ね踊るトラウト(鱒)の姿。大物だ!激しい格闘の末、ビッグワンを高く持ち上げるポール。ポール役のブラッド・ピッドの笑顔のなんとまぶしく爽やかなことか。三人を満たす晴れやかな幸福感。
だが、それはつかの間の幸福だった・・・。
ラストシーンは、夕暮れ時、老人となったノーマンが静かに流れる川で釣りをするシーン。さまざまなことを回想しながら一人キャスティングを繰り返すノーマンをカメラは次第に遠景化していく。チョッと比類ないくらい美しいロングショットだった。
今年もまた、初夏になったら渓流釣りに出かけるつもりだ。(IK)