「鼓動」2010年7月28日
あぶってかも

夏場、油の乗った「あぶってかも」は酒の肴やおかずとして好む人も多い。
全国的にはスズメダイを食べるのは少ないはずだ。
愛媛で南蛮漬けにして食べるらしいが、それ以外は食べる地域については聞き覚えがない。
我が家では、ビニール袋の中で満遍なく塩にまぶしたスズメダイを、冷蔵庫で一晩寝かせ、グリルで塩焼きにするが、このとき鱗も内臓も取ってはならないという義父の教えを守っている。
焼きたての熱いうちが美味い。箸で、かさぶたを剥がすように、皮とともに鱗を取れば、ホクホクとした白身には油が乗っていて、肴として申し分なしだ。
あぶってかもの時期は、博多祇園山笠の時分との印象が強い。
20代の頃、7月15日未明の山笠を見物するために、友人たちと博多の居酒屋であぶってかもを食べながら待っていた記憶のためかもしれない。
博多の名物として知られたのは、比較的新しく戦後になってからのようだ。
居酒屋のメニューがいつの間にか家庭の食卓にも上るようになった。
祇園山笠を過ぎると梅雨が明け、博多の街に夏空が広がる。
暑かった一日の終わりに、冷たいビールとあぶってかも。
友人たちとのバカ話に興じるにはそれで十分だ。(HR)