「鼓動」2010年8月5日
偉くなりたくない

日本青少年研究所が実施した日、米、中、韓の高校生意識調査でこんな傾向が出ている。
「えらくなりたいか」の質問に「強くそう思う」と回答した割合は中国34%、韓国23%、米国22%だったのに対し日本は8%。
自分の将来の希望について、「自分の会社・店を作りたい」は日本14%に対し中国37%、「金もうけをしたい」では日本37%に対し韓国が75%。「暮らしていける収入があればのんびり暮らしたい」は他3国が14-22%だったのに対し日本が43%。
これをもって、「日本の若者は元気がない」「内向きだ」と即断するのもどうだろう。
「立身出世」「末は博士か大臣か」などという言葉がリアルなものとして信奉される社会が、確かに一昔前の日本にはあった。
若者の志は、富国強兵の明治、高度成長の昭和、と国の有りように添いながら、そのかたちを変えてきた。
そして現在。非正規労働者の増大、大卒者就職率の悪化、といった雇用不安は、若者達に「働くこと」へのポジティブな考え方を奪っている。
「働くこと」の先に「偉くなること」があるのだとしたら、「偉くなりたいか」という問いかけ自体、若者にとってフワフワと手ごたえのないものでしかない。
市井の一員として平凡でもコツコツと働き続けるか、自分の夢を実現させてビッグになるか。
そのいずれであれ、根っこに「働くことは尊いことだ」という価値観が揺るぎなくある社会でなければならないと思う。(M)