「鼓動」2010年9月1日
愛の讃歌/長谷川きよし

1969年に「別れのサンバ」で衝撃的なデビューを果たし、以降華麗なギタープレイとどこか暗い情念を湛えつつ伸びのあるその声に年配のファンも多い。
「You Tube」で長谷川の「別れのサンバ」を久しぶりに聞いた。
昔と変わらぬ艶のある声だ。これほど巧みなギターの弾き語りができる歌い手はそういない。
長谷川に「愛の讃歌」の歌もあった。訳詩は長谷川自らのものだ。
曲の中ではフランス語でも歌っていた。そうだ、この人はシャンソンも歌うんだった。が、越路吹雪の「愛の讃歌」とはまったく別の作品と言っても良い。ひたぶる愛の想いはアナーキーでどこかせっぱ詰まっていて、聴かせる。
フランス語に詳しい人によれば、この歌のほうがよほど原曲の歌詞に忠実だという。岩谷時子の「愛の讃歌」は、訳詩ではなく作詞に近い。
<岩谷時子作詞>
あなたの燃える手で
あたしを抱きしめて
ただ二人だけで生きていたいの
<長谷川きよし訳詩>
たとえ空が落ちて
地が裂け崩れても
ただお前だけを愛する私
越路吹雪、エディット・ピアフ、それぞれの歌と聞き比べても、長谷川の歌は魅力的だ。曰く、男の「愛の讃歌」になっている。
2歳で失明。以後闇の世界に住み、歌に目覚め、今日までプロとして歌い続けてきた彼の歌とギターは、聴くものをいつもゾクゾクとさせる。(HR)