「鼓動」2010年9月10日
瞳の奥の秘密

作家沢木耕太郎さんが公開予定のおすすめの映画を紹介している。8月10日は本年度アカデミー賞外国語映画賞を受賞した『瞳の奥の秘密』(アルゼンチン映画)だった。
「映画らしい映画を見た、という満足感がある」。沢木さんはそう書いていた。
8月21日からKBCシネマで公開されている同映画を見て、月並みだが、「映画らしい映画」という全く同じ思いを抱いた。
舞台はブエノスアイレスである。裁判所を引退したベンハミンは、虚しい生活から逃れるために、かつて関係した事件を小説に書こうとしていた。
それは結婚間もない女性が殺害されるというむごい事件だった。
妻を奪われた銀行員の夫の深い悲しみと愛情に突き動かされたベンハミンは、ひそかに想いを寄せる上司のイレーヌの制止をも振り切り、捜査を続行する。
そしてようやく犯人にたどり着くのだが。
ミステリーとラブロマンスの力は大きい。過去と現在とを行きつ戻りつしながら、観客はぐいぐいと引っ張られてゆく。失われた愛と報われなかった愛は幾重にも絡み合いながら。物語はサスペンスにあふれ、そしてロマンチックに展開する。
25年前未解決に終わった事件の衝撃的な結末には観客は思わず息をのむ。
本作品は、09年本国アルゼンチンで封切られ大ヒットした作品である。(IK)