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「鼓動」2010年10月25日

キツネ顔の女

鼓動 ある年の夏、熊本の山鹿の平山温泉に遊んだ。1泊して翌日福岡への帰りは山道を行き峠を越えることにした。しばらくつづら折りの道を走るうちに、次第に道は狭く、あたりは木々に覆われて薄暗くなった。行けども行けどもくねくねとした道に心細くなってきたが、そのまま走ることにした。やがて山道は分岐し、二股になっていた。
 さてどちらの道を行くべきか・・・。迷っても仕方がない。左折して奥に進んだ。
 が、奥に進むにつれ、いよいよ道は薄暗く荒れたようになってきた。
「引き返しましょう」
不安を感じた家人の言葉に頷いて、先ほどの分岐まで戻ることにした。
 狭い道で何度も切り返しながら車の向きを変えた直後だった。一台の車がこちらに 向かってくるのが見えた。いい具合だ。ちょっと聞いてみようと思い、離合の際にウィンドーを開けて道を尋ねた。
 運転していたのはキツネ顔の女性だった。助手席には中学生くらいの娘が座っていた。
「このまま行ってください。私たちは急いでいるので、詳しい説明をする時間はありません。 この先に家がありますからそこで訪ねてください」
そういうと、女性は先を急ぐように車を出した。
 あのまま我々が引き返してきた道を行くのだろうか・・・。とても車が行き交うような道ではなかったのだが。

「キツネよ」
「エッ」
家人が発した言葉にびっくりして言葉を詰まらせた。
「キツネぇ。まさかそんなわけないだろう」
「見たでしょ。さっきの道の様子。あんな道を急いでどこに行くというの。それにあの女の人の顔、見たでしょ。キツネ顔だったわ」
「・・・」
「キツネに出くわしたのよ」
「いまどきそんな話があるものか」
「いえ、間違いないわ」

 不気味な思いを味わいながらやっとのことで県道に出た。少し安堵していると、家人が つぶやくように再び口を開いた。

「キツネっているのね」
「本気でそう思っているのか」
「そうしか考えられないわ」
家人が、そうした迷信まがいを信じるとは思わなかった。愚かである。江戸時代の愚かさをいまだに保有している。今や、21世だというのに。
 ・・・それにしてもあの女性、確かにキツネ顔だったなぁ・・・。(HR)

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