「鼓動」2010年12月12日
隕石

かかる夜ひそかに隕石の墜ちゐむか
みずうみ濡らす冬の月かげ 生方たつゑ
静かな湖面を冬の冴えた月が照らしている。その光景を眺めていると、きっとこんな夜に地上のどこかに隕石が落ちてくるのだという空想に作者は浸っている。太古のままの静寂が支配している夜。空を仰ぎ見て遠い彼方から墜ちてくる星の破片の予感。
落下する隕石が目撃された例は、日本には45件あるらしいが、このうち最も古い記録は、福岡県直方市に落下した隕石で、861年5月19日の記録が残っており、目撃記録が残る世界最古の隕石である。俗に「直方隕石」と呼ばれ、重量472gの石質隕石で、地元の須賀神社に社宝として保管されている。5年一度公開され、次回の公開は来年2011年10月である。
隕石にはとてつもなく大きなものもある。「生物の大量絶滅」を引き起こした一つの原因が、今から6500万年前の白亜紀末に、中央アメリカのユカタン半島付近に落ちた巨大隕石である。直径約10キロメートルの巨大隕石は、地球に衝突し猛烈な粉じんを巻き起こして、それが世界中を覆って太陽からの光を遮り、大規模な気候変動が起こったとされる。それまで全盛を極めていた恐竜やアンモナイトが気候の変化に耐えられずに絶滅する。これによって、中生代は終わり、地球は新生代を迎えることになる。この論文は、1980年に発表され、いまやほぼ定説となっている。
宇宙天体をさまよっていた小天体が、月や火星と衝突し、衝撃で岩石を跳ね飛ばす。その跳ね飛ばされた破片が、たまたま地球に引力に引き寄せられ、地球に落下したのが隕石だというが、隕石の中には、地球の生物に大きな影響を与えるなど、進化の歴史に波乱をもたらしたものさえあるのだ。(IK)