「鼓動」2010年12月13日
ロールモデルの女性たち

山倉さんは、平成11年にゲームソフト開発の「株式会社ガンバリオン」(福岡市)を設立し、人気漫画作品などの家庭用ゲームソフトを次々にプロデュースされている。国内外で424万本を売り上げるなど、いまや国内外で注目の企業である。また、福岡のゲーム企業の社長らとGFF(ゲームファクトリーフレンドシップ)を起ち上げ、同組織の副会長の立場にある。今回の受賞は、産学官連携による人材育成などに取り組み、地域のゲーム企業を牽引する活動を続けるなど、女性の社会進出に向けた新たなロールモデル(先導的に役割を担う人)として、先駆的で実践的な活動を実施していることがその受賞理由のようだ。
「企業賞」を受賞された企業に、「株式会社西部技研」(古賀市)の名前があった。この会社は環境保全・省エネ機器等の研究開発型企業で、昭和40年に設立されている。この会社には、昔2度ほど訪問したことがあるが、当時は、男性中心の会社だったが、いまや、採用の半分は女性が占め、従来男性中心だった営業、設計、商品検査の分野にも女性の職域が拡大している。女性にやりがいや達成感を持ちながら働いてもらおうということで、平成20年に「女性キャリアアップ制度」も設けている。キャリアアップを望む女性社員の中から、8名を選抜して、その達成に向けた研修やフォローアップを行っているという。やがて彼女らから将来の女性管理職も生まれるのだろう。企業内に女性のロールモデルを積極的に作り出そうとする動きである。
思わぬ形で、重責を担わざるを得なかったケースもある。「西部技研」の先代社長である隈千恵子さんは、創業者隈利美さんの奥様だった。ご主人の急逝で、突如、社長として会社を支えることになった。きっとご苦労も多かっただろう。隈千恵子さんには『コンドラチェフの波』という歌集がある。数年前、西日本新聞に紹介されたのを記憶している。短歌は、創業の時から始められたようだ。深夜日記を綴るように歌作を続けられた。その中の一首は、社長になったときの歌である。
結末の責めはこの身に負うものと決めて時雨の音を聞きおり
経営も歌作も孤独な営みだったはずだ。歌は平明でいながら思いは深い。(IK)