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大友克洋history

大友克洋が日本のアニメ、漫画作品に与えた影響、功績は計り知れない。大友の登場により、日本の漫画史は大きく変化した。漫画の領域に留まらず大友は現在の日本のアニメーションの海外進出のきっかけをつくり、現在も躍進を続けている。そんな大友克洋のこれまでの歴史を作品とともに振り返っていこう。
1.大友克洋前史
大友克洋が漫画家としてデビューした1970年代は、日本の漫画史において大きな変化があった年だった。それ以前には日本の実験的な一部の漫画誌を除き、「少年漫画」「少女漫画」「劇画」など、それぞれがジャンルを確立しており、その枠内で活躍する作家が多数だった。そのなかで、少女漫画においては、萩尾望都、竹宮惠子、大島弓子など「花の24年組」と呼ばれる昭和24年前後生まれのマンガ家たちの作品が少女漫画の読者層だけでなく、男性読者にも支持されていた。また少年誌においては、ジョージ秋山『アシュラ』や永井豪『デビルマン』など少年誌に掲載されていながらも青年層にも響く話題作が誕生していた。このように、それぞれのジャンルのなかにいながらもその枠を超え出るような兆候を見せる漫画家が登場し始めていた。そんななかで、大友克洋はデビューを果たすことになる。1970年代末に既存の漫画ジャンルを乗り越えるニューウェーブという動向があった。大友はその一人に数えられるが、特にのちの漫画、アニメに多大な影響を及ぼしたという点で特異な存在といえる。
2.「大友以前、大友以後」
しばしば「大友以前、大友以後」といわれるように、大友の登場によって手塚治虫以来の漫画の文法に変化が起こることとなる。かつて漫画は記号的な絵と連続的なコマによって物語を表現するものだった。それに対し大友が描く画面は自在に変化する。登場人物同士の対話の場面が続くかと思いきや、突如一枚の風景が登場する。このような自在に変化するカメラワークによる画面の連続で作品が構成される。大友作品において、セリフなしの風景が大写しになるような場面は頻出である。このように風景だけで何かを伝えるという方法は斬新であった。また、特に初期の作品にみられるが、日本人のキャラクターを美化せずに、見たままの

▲(左)『ショート・ピース』(1979)表紙、(右)『童夢』(1983)表紙
容姿(細い目、低い鼻など)で描いたことも彼が漫画界にもたらした大きな衝撃であった。男性は男らしく、女性は女らしく描くのが普通とされる時代において、このような事態は異例であった。これらの特徴を以って大友は日本の漫画界を揺るがした。初期の作品はその時代に青年期を送った者の記憶に今なお印象深く刻まれている。
3.『AKIRA』と海外進出
海外で日本のアニメーション、漫画作品を知る者にとって、その名自体が日本の漫画アニメを形容するものといっても過言ではない。それが『AKIRA』である。『AKIRA』は大友の漫画作品として1982年より週刊ヤングマガジンにて連載を開始した。
作品の舞台は、新型爆弾投下により勃発した第三次世界大戦後の「ネオ東京」。そこで展開される不良少年たちとバイク、超能力、廃墟都市の物語は、大友の卓越した描写力によって圧倒的な世界観をつくり上げた。その後の漫画作品に多大な影響を及ぼす本作は、1988年に大友自身の手によって劇場アニメ化される。その翌年には北米・ヨーロッパで公開され、日本のアニメーションの国際的評価を一変させるほどの人気作品となった。また、海外での映画のヒットが日本での『AKIRA』再燃のきっかけにもなった。
作品の舞台は、新型爆弾投下により勃発した第三次世界大戦後の「ネオ東京」。そこで展開される不良少年たちとバイク、超能力、廃墟都市の物語は、大友の卓越した描写力によって圧倒的な世界観をつくり上げた。その後の漫画作品に多大な影響を及ぼす本作は、1988年に大友自身の手によって劇場アニメ化される。その翌年には北米・ヨーロッパで公開され、日本のアニメーションの国際的評価を一変させるほどの人気作品となった。また、海外での映画のヒットが日本での『AKIRA』再燃のきっかけにもなった。

▲劇場版『AKIRA』より

▲(左)単行本『AKIRA』表紙、(右)劇場版『AKIRA』ポスター
(C)1988 マッシュルーム/アキラ製作委員会
4.監督としての活動
大友は『AKIRA』連載終了後、主な活動の場を映画に移している。1991年には『老人Z』を、1995年には自身の漫画を原作としたオムニバスアニメ作品『MEMORIES』を発表した。大友が手がけるアニメ映画作品のなかでも2004年の『スチームボーイ』は製作期間9年、アニメ映画史上最大の製作費24億円をかけて制作されたことでも話題となった。アニメ作品に限らず大友は、実写の映画作品へも活動の場を広げる。1991年の『ワールド・アパートメント・ホラー』や2007年の『蟲師』などである。『蟲師』は漆原友紀の漫画原作をオダギリジョー、蒼井優、江角マキ子など豪華キャストで実写映画化を果たした。
このように自身のスタイルを持ちながらも活動の枠を広げてきた大友が、この度9年ぶりに劇場版アニメ作品を手がけたのが今作の『SHORT PEACE』である。
このように自身のスタイルを持ちながらも活動の枠を広げてきた大友が、この度9年ぶりに劇場版アニメ作品を手がけたのが今作の『SHORT PEACE』である。

▲劇場版『スチームボーイ』より
(c)2004大友克洋・マッシュルーム/STEAMBOY製作委員会