「鼓動」2010年1月17日
千年の祈り

十二年ぶりの娘との再会は何処かぎこちない。老父が作る手料理の夕食にも寡黙な娘。老父は娘の孤独を知るが、度重なる父の質問に、娘は「お父さんはいつまでうそをつくつもりなのか」と反対に父を詰問する。
父の隠された過去。娘の言葉に深く傷ついた老父だが、一人語りのように己の過去を語りはじめる。彼はロケット工学者ではなかった。そうであったのは32歳までであった。組織における些細な誤解が彼の仕事を奪い、そして家族の絆さえ断ち切ってしまった。
「千年の祈り」という厳粛で美しい響きの言葉は中国のことわざから来ている。恋人も家族もそして父と娘の関係も、そうなるには千年の縁が必要だと、娘は亡命ロシア人の恋人に説明する。
老父役のヘンリー・オーはまるで小津安二郎映画に登場する老父のようだ。慎ましく静謐さに満ちた佳作である。(IK)
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