「鼓動」2010年4月16日
たまには京劇でも

一部はやや平板な感じだったものの、二部は四面楚歌の中で項羽と虞美人が別れを決意する場面あたりで、ぐんと盛り上がる。緩急のテンポも。よく計算された間もよかった。
虞美人が、項羽の宝剣を抜いて、自決する場面には、チャン・カイコー監督の映画『さらば我が愛/覇王別姫』のラストシーンを思い出した。
1930年代の京劇俳優養成所で育ったチャンとフォンイーの二人の若者が成長し、やがて「覇王別姫」で共演してトップスターになるが、日中戦争、文化大革命の嵐が吹きすさぶ中、京劇は堕落の象徴として見なされ、世間からは白眼視された。
チャンもフォンイーも虐げられ精神的も追い詰められてゆく。愛憎と裏切りの連鎖の果て、「覇王別姫」の衣装姿で、チャン(虞美人)はフォンイーの刀を抜き、自らの命を絶つ。ここが、京劇の覇王と虞美人の場面に重なってにくい演出となっていた。
さて、今年も5月に京劇「三国志-赤壁の戦い-」が上演される。こちらも映画も手伝って、興味のある方も多かろう。(IK)