「鼓動」2010年5月3日
ナイチンゲール

初夏、夜の闇にときおり響き渡るササゴイの声は何かにおびえているようにも聞こえる。
ヨーロッパの夏鳥と言えば、ナイチンゲールだろう。冬場はアフリカで過ごし、春ヨーロッパ各地の森に渡ってくる。文学作品にもしばしば登場している。雄は、春から夏にかけて昼夜を分かたず美しくさえずるが、ことに初夏の夜に響くその美しい声は、古来人々から親しまれている。
すぐに明ける夏の夜、静まりかえった公園の森の中でナイチンゲールは歌う。瞬く間の美しい調べは、夜の巷に吸い込まれて行く。
「あれはナイチンゲール、ヒバリじゃないわ、あなたのびくびくしている耳に今聞こえたのは」(『ロミオとジュリエット』第三幕)
最初の夜を過ごした朝、もう帰ろうとするロミオを引き止めるジュリエット。聞こえているのはナイチンゲール。夜はまだ明けていないわ。かつてオリビア・ハッセーの演じたジュリエット。中学生のときドキドキしながら観たものだ。(IK)