「鼓動」2010年5月8日
花の街・ハノイ

五月から雨季に入るベトナムだが、北部のハノイは四季を有しており、四季の季節感を感じさせてくれるのが、木々の緑やとりどりの花たちだ。
なかでも、「鳳凰樹」とか「火炎樹」と呼ばれる木は、5月から7月にかけて真っ赤な花をつける。イチョウの葉に似た離弁花を枝先に集め、遠くから眺めると、確かに炎のように見える。ハノイの人たちは、この花を「ファイアー・フラワー」と説明してくれた。
ホーチミンを舞台にしたベトナム映画『季節の中で』のラストシーンは、真っ赤に染まる火炎樹の下で、二人が抱きあうシーンだったと記憶している。
プルメリアも良く見かけた。ホテルの玄関やホーチミン廟の公園にも植えられていた。花芯をレモンイエローに染めた厚みのある白い花には濃厚な強い香りがあった。
このほかにも、ライラックに似た薄紫の花木や、合歓の花のように樹冠に繊細な赤と白が入り混じった花木など、実に多彩な木々の花が、至るところ街を彩っていた。
千年の都ハノイ。ドイモイ以降成長著しいこの街だが、旅する者に、フランスの面影とどこか香しい「花の街」の印象を残してくれる。(IK)