「鼓動」2010年7月12日
扇子

下手に持とうものなら野暮にも不遜にも映る。土地柄にもよる。背広の胸ポケットに挿してサマになるのは大阪や京都の関西圏だが、東京や福岡では鼻持ちならない印象を与えかねない。
扇子は日本で発明されたそうだ。中国から渡来した団扇をもとに編み出されたのが、携帯にも便利な折りたたみ式の扇子だという。なるほど何ごとにもコンパクトを旨とする日本人らしいアイデアである。
日本で生まれた扇子は、北宋の時代中国に輸出され、さらに大航海時代ヨーロッパに伝わった。重宝な小道具は王侯貴族に東洋への憧れを「煽った」に違いない。ちなみに17世紀のパリには、扇子を扱う店が150軒を数えたというから扇子の人気ぶりがうかがえる。
蒸し暑い日本の夏。気分だけでも涼もうと毎年一本ずつ買い求める。時には人前では憚られるほどの大ぶりの扇で、ちょうど鬼平のようにパサリパサリと鷹揚に扇いで見るのも悪くない気がする。(IK)