「鼓動」2010年7月22日
蝉しぐれ

かつては、セミといえばアブラゼミとニイニイゼミだった(夏休み後半になるとツクツクホウシに主役は変わったが)。が、最近では圧倒的にクマゼミが多い。
街中のビルの谷間の街路樹に集まったクマゼミがいっせいに鳴くと、暑苦しくてうるさいくらいだ。
小学生のころは、クマゼミはまだ少なく、セミ採り少年にとっては採集に値するセミであった。何より、金色の微毛におおわれた黒色の大きな体、緑色に縁取られた透明な翅に目を輝かせたものだ。が、近年ヒートアイランドの影響のためか、あまりに増えたクマゼミには、少年たちの関心は低くなったようだ。
山間に入ると、ミンミンゼミの声を聞くこともあるが、市街地では少ない。
また、カナカナ(ヒグラシ)も山里でしか聞く機会が少ないようだ。夕暮れになると森の中から儚くさびしげに響くカナカナの声には、今も息をひそめて聞き入ってしまう。
皆既日食で大騒ぎだった昨夏の7月22日は、福岡では皆既ではなかったものの、食分が0.897と月がかなり入りこんだ部分日食で、しばしの天文ショーを観察することができた。太陽が月に覆い隠され始めると、公園で見上げるたくさんの人たちから歓声があがった。それからしばらくして少し暗くなり、それまで激しく鳴いていたセミの声がピタリと止んでしまった。
宇宙の不思議にセミたちも敏感に反応したかのようだった。(IK)