「鼓動」2010年7月29日
茶館にて

ステージをアジアの若者による競演の場としたい、というプロデューサーの意向があって、オーディションのため一行で中国江蘇省を訪れた。
変貌を遂げつつある中国の「今」は、出会った若者達の自信に満ちた佇まいにも、車窓に見える建設ラッシュの街なみにも感じられた。
車酔い、人酔い、などという言葉があるが、まさに街に酔わされた感のあるダイナミズム。
一息いれましょう、と案内されたのは「茶館」である。コーヒーでなく、緑茶やジャスミンティ、ウーロン茶など、さまざまな中国茶を楽しむいわゆる喫茶店だ。お茶うけのお菓子もずらっと並んで、どれも取り放題。
店内は、つれづれなるままに、新聞を読む人、トランプを楽しむ人。日がな一日過ごす人もいるという。
分単位のスケジュールをふと放棄したい気になって、誰ともなく「ここでしばらく、まったりしていようよ。」ということになった。結論を出さなくていいおしゃべりに、ポツリポツリと「自分の話」が混じっていく。
同行していた中国人の男性は、文革時に下放されたという両親の話をした。彼は両親の期待を一身に背負っているように見受けられた。
茶館の時間はゆっくりと流れ、あらゆることをのみこんで、中国は変動する。(M)