「鼓動」2010年8月20日
八月のオリオン

その威容は、冬にしか見えないと思われがちだが、実は夏にも見ることができる。
夜明け前、まだ暗い東の空を眺めると、低い位置に三ツ星が見え、鼓のような全体像がオリオン座であることが判別できる。
八月のはじめ、久しぶりにオリオン座を見つけた。
夜来の雨も上がって、下弦の月が天頂に届く頃、東の山の端の上に特徴あるオリオン座が見えた。しばらく眺めていたら、幸運にも流星が二つ流れた。
昔、大学受験用の通信添削を行うオリオン社という会社があったが、20年ほど前なくなったようだ。その頃、高校生向けの予備校は少なく、受験対策は、もっぱら参考書が主で、ほかにはラジオ講座や通信添削で補うというのが主流だった。
毎月送られてくる課題を解いて、それが高得点のときは、解説の冊子の名簿にペンネームが載った。
オリオンという名前を聞くと、星座のオリオン座とともに、今でも時としてオリオン社という懐かしい名前を思い出すことがある。
高校三年の夏休み、自宅の暑い部屋で、扇風機に当たりながら、添削問題に取り組んだ記憶がある。いや、実際は問題の難しさに音を上げて、横になっていたらそのまま寝入ってしまったこともしばしばだったはずだ。
あの頃は、典型的な夜型人間だと思っていた自分が、中年となったらいつしか朝型になっている。おかげで、若いときには見たこともなかった八月のオリオンに遭遇するようになった。(HR)