「鼓動」2010年10月11日
天才桜木花道 参上

『SLAM DUNK』の主人公桜木花道は、運動能力に長けた底抜けに明るい、そしてうぶな男だ。バスケ部赤木主将の妹晴子に誘われバスケ部に入部すると、バスケット未経験者ながら、やがてチームのキーマンとして活躍することになる。ライバルは同じバスケット部の流川楓。花道と対照的に、クールな天才肌のプレイヤー。花道とはいつも小競り合いとなる。
花道にとって「晴子さん」の存在は大きい。いや、読者にとってもその存在は大きい。すべての試合を見届けながら、読者と共に涙し、感動を共有する。物語の結末では、リハビリ中の花道に、湘北バスケの動向を報告するのは健気だった。
3年生の三井もまた持ち味を出している。それは男の弱さだ。一時不良グループに入っていて、花道の入部とともに、バスケ部に戻ってくる。体力不足で、いつも息も絶え絶えのプレイだが、カッコよさもあって、むさくるしい連中の中で光っていた。
主将の赤木とライバル綾南高校バスケ部のキャプテン魚住は、なくてはならないキャラクターだ。いかつい男の代表格、父権的な貫禄を持つ存在だ。この二人がいてこそ、流川も三井もよりカッコよく見えた。
桜木花道。主人公として抜群のネーミングだ。自称「天才」。類まれなる天賦の才能。ドリブルもシュートもバスケ素人の花道には無理だったが、リバウンドで大きく開花した。短期間での、ものすごい成長と活躍に読者は毎号わくわくさせられた。
ひと夏のバスケ一直線の物語『SLAM DUNK』の結末は、大けがを負った花道のリハビリで終わる。もうバスケはできないかもしれないと想像した読者は多かったはずだ。残酷なほど鮮やかなラストだった。(HR)