「鼓動」2010年10月21日
都大路の最先端ファッション

時代を850年ほどさかのぼると、平氏政権から鎌倉幕府の確立に至る変革期に朝廷権威の存続を図った人物に後白河院がいる。院は当時の流行歌である今様歌謡を好み『梁塵秘抄』を撰している。そのなかに次のような歌も残っている。
此の頃京(みやこ)に流行るもの、柳黛(りゅうたい)髪々えせ鬘(かつら)
しほゆき近江女(おうみめ)女冠者(かじゃ)、長刀持たぬ尼ぞ無き
不穏な空気漂う平安末期、都大路の女たちの最先端ファッション。細く書き上げた眉や奇抜なヘアスタイル、見せ掛けだけのカツラ。まるで水着(潮湯着)姿の近江の女、少年のように見える男装の麗人。物騒な世情を反映して長刀を携える尼さんたちさえいるくらいだ。
世の風俗を揶揄するような今様歌謡だが、大都会の花道で、最先端ファッションをまとう女性群像は昔も今も変わらないようだ。(HR)