「鼓動」2010年11月7日
シクラメンのかほり

ご存知「シクラメンのかほり」の冒頭の歌詞。この中に出てくる「真綿」とはいわゆる木綿ではない。絹である。辞書によれば、糸にできない屑繭を引き伸ばして乾燥した綿」とある。綿とは、ワタの実や蚕の繭などから製した繊維の塊をいう。歌詞は、シルクにも似たシクラメンの花ほど清々しいものはない、という意味だ。
毎年冬になると、花屋にはたくさんのシクラメンの鉢が並ぶ。最近は香りを有するシクラメンもあって、それこそ「シクラメンのかほり」によって喚起された消費者ニーズに応えて、園芸家の品種改良の努力が、花を咲かせたというべきだろう。
地中海沿岸が原産のシクラメンには「篝(かがり)火草」との和名もある。
花を見たさる貴婦人がそう呼び、それを植物学者の牧野富太郎が正式に和名として命名したという。立ち上るような紅の花弁の群れはなるほど闇に輝くかがり火にも似ている。
ポインセチアとともに冬の花として人気のある花だが、どういうわけかシクラメンの置き場所と言ったら玄関の下駄箱の上というのが多いような気がする。反り返った五枚の花弁の花姿を眺めるには、ポインセチアと違って、上からではなく、横からの方が見やすい。
でも、時には日差しのあたる居間の窓辺に置きたい。部屋の中がいつもより明るくなった気分がする。(HR)