「鼓動」2010年12月10日
冬の黄砂

日本に飛来する黄砂は、1000分の1ミリメートルという微粒子で、スギ花粉の直径の10分の1にあたる。したがって体積はスギ花粉の1000分の1と非常に小さい。この黄砂の起源は、タクラマカン砂漠やゴビ砂漠といわれ、偏西風に乗って遠く日本まで飛来してくる。
唐の詩人に王維という人物があったが、その七言絶句「元二(げんじ)の安西(あんせい)に使いするを送る」は、高校の教科書に出てきたように思う。
渭城の朝雨軽塵をうるおす
客舎青青柳色新たなり
君に勧む更に尽くせ一杯の酒
西の方陽関を出ずれば故人無からん
西方に旅立つ人を送った渭城の朝は、雨だった。春の雨は黄塵を洗い流して、宿の前の柳は青々としてひときわ美しい。さあ、もう一杯飲み干したまえ。陽関を過ぎれば、もはや西域に知る人もいなくなるだろうから。
長安の西北にある渭城もまた、毎年春先黄砂に見舞われたのだろう。降り積もった黄砂を流す春の雨が、木々の緑を鮮やかにすると、気持ちも晴れやかになった。
日本にもやってくる黄砂。洗濯物を干すにも注意が必要だし、黄砂の後は洗車しなければならない。遠くシルクロードから運ばれ、中国の各地の空をはるばる旅して来たとはいえ、いささか歓迎しにくいお客である。(HR)