「鼓動」2010年12月19日
高ぶる獅子の鼓動

門付の獅子舞がぱあっと大きな口を開けて太平を寿げば、梅の花も競って咲き始める。一茶の句に、屈託はない。江戸に来て十数年、知人の家を転々とする一茶の、初春にふさわしい一句だ。
獅子舞は、日本へは7世紀の初めに朝鮮半島を経由して、伎楽と呼ぶ仮面劇の一部として伝わってきたといわれる。やがて、民俗芸能として全国に広まり、悪霊祓い、豊作祈願、雨乞いなどの呪術機能を持つ芸能として民衆に支持されるようになった。
福岡県内には、102もの民俗芸能としての獅子舞が残っている。民俗学研究家の佐々木哲哉さんによれば、福岡県の獅子舞は、大きく分けて、①悪霊や邪霊や祓う「祓い獅子」、②舞と太鼓を中心とする楽からなる「舞楽的要素の強い獅子舞」、③韓国の仮面劇と類似する「演劇・狂言的要素を持った獅子舞」、の3種類に分かれるという。
アクロス福岡では、来年2月19日(土)の伝統芸能フェスティバルで、「高ぶる獅子の鼓動」と題して、上記の分類から3つの獅子舞が演じられる。祓い獅子は、台湾からの伝来したという朝倉市ヒナシロの荒々しい獅子舞。舞楽的要素の強い獅子舞としては、飯塚市大分の、優雅さを感じさせる獅子舞。演劇的・狂言的要素を持った獅子舞としては、福岡市今宿青木の滑稽で娯楽性あふれる獅子舞である。
それぞれ、台湾の獅子舞、中国の伎楽、韓国の仮面劇といったアジアの舞踊舞楽の流れを汲んでいる。福岡の獅子舞を語るとき、アジアの影響を抜きにして語れない。
今回の芸能フェスティバルは、福岡デザイン専門学校の学生も参加して空間プロデュースを行い、より斬新な空間演出を目指している。ダイナミックの獅子舞の演舞と幻想的空間のコラボレーション。伝統を今、刺激的に体感したい。(HR)