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[アジアンビートオリジナル ポップカルチャーコラム vol.3] 

エヴァがあるから日本である。


ヱヴァンゲリヲン公式フリーペーパー「eva EXTRA03」より
エヴァンゲリヲン」について何か書いて欲しいと言われて、サッと書ける物書きは少ないと思う。

書く決意がいる。
解釈に時間を要する。
不用意に関わるのを作品自体が拒んでいる。
「エヴァンゲリヲン」とは、そういう題材である。

2009年6月末に封切られた「エヴァンゲリヲン新劇場版・破」を観た。誠に私的な感想であるが、傑作である。
テレビで見ていた主人公である少年・碇シンジの体温が、今回の劇場作品では、2度ほど上がっている。血が通うことによって、「エヴァンゲリヲン」は、日本の正統派アニメとして再評価される予感がする。

SFではなく、日本神話としてのエヴァンゲリヲン。

日本を創った神様達が活躍する古事記をご存じだろうか。

その内容は、驚愕するものが多い。
例えば、天照大御神が、天の岩谷戸に籠もった理由。
弟である須佐之男命(すさのおのみこと)の傍若無人なふるまいに怒ったからなのだが・・・。
その蛮行とは、姉である大御神の食堂にうんちをまいたり。機織り小屋に、皮をはいだ馬を投げ込んだり。機織女の性器を突いて殺したり。半端じゃない。今なら放送禁止である。

日本は、どうして生まれたのか。
創造主である、神とは、どういうものか。
日本神話には、それが書かれている。

しかし、その内容とは、上記のように、不条理で、非合理で、凶暴で・・・とんでもない。
物事の起源を辿るとは、このような混沌に分け入ることだ
人間が共通に持っている無意識を引きずり出して、答えの出ないものに、答えを出そうとすることだ。・・・という意味において、「エヴァンゲリヲン」は、サイエンスでもなく、フィクションでもなく、まさしく日本神話である

エヴァは、「人間のあるまじき力」を可視化したもの。

日本神話に出てくる神たちと同じように、私たちは、不条理で、非合理な、凶暴性を無意識に孕んでいる。
それは、理性で語れば「人間のカタチをしていないもの=あるまじき力」である。しかし、その「人間のカタチをしていない」ものを持っているからこそ、人間である。

それを可視化しているのが、エヴァンゲリヲンというロボットである。

だから、使途を凶暴に喰らう姿に、私たちの内なる凶暴性が目覚める。
ロボットというカタチをしているのに、エヴァンゲリヲンから血が吹き出ることを不思議に感じない。むしろ、その自傷行為を、実は、心の奥では、期待したりもしている。

このような文脈で読むと・・・「エヴァンゲリヲン」は、核兵器そのものであり、人間が作りし「エヴァ」と、
人間が作りし「使徒」との終わらない戦い
は、「人間が始めし戦争」そのものである。

さしずめ、自分より大きなものに振り回される無力な少年シンジは、我々、日本というところか・・・。

日本再生の物語へ。

「エヴァンゲリヲン」では、執拗なほどに、日本が描かれている。

第三新東京市は、昭和の街そのものであるし、年中泣いている蝉の声には、あの懐かしい日本の夏休みがある。シンジ達が通う学校での物語は、一昔前の青春ドラマ。
全編に、日本の原風景が描かれている。原爆に焼き尽くされ、アメリカやヨーロッパから入ってきた文化に浸食をされて消えた街が、「エヴァンゲリヲン」の舞台なのである。

戦後の日本は、アイデンティティーを失った。
経済大国として世界に誇れたとしても、世界平和を、率先して語るポジションにはいない。
原爆を唯一おとされた国でありながら、反戦活動のリーダー国になれない。むしろ、アメリカの軍事力の前に、ねじ伏せられている。
常に、追従するしかない。

だから、穿った見方かもしれないが、「エヴァンゲリヲン」は、脱・アメリカ=日本のアイデンティティー再生の物語としても見ることができる。

「逃げちゃだめだ。逃げちゃだめだ。」主人公・シンジの永遠なる自問自答は、日本の在り方への、大きな問いかけでもある

新劇場版エヴァは、何を「破」ったのか・・・。

ウジウジして逃げてばかりで、大きなものに振り回されるばかりの主人公・シンジが、「エヴァンゲリヲン新劇場版・破」では、変わった。

覚醒した
タイトル通り、何かを「破」った

自ら誰かを助けたいと強く願うようになり、
そのためにエヴァに乗り、戦うことを決意する
のだ。
物語を受け入れるのではなく、
主人公らしく、自らが物語を動かそうとする




反対に、第2パイロットであるアスカは、自己犠牲的に行動するようになり、他人のためにお弁当を作る。
人形のように生きているレイは、碇親子を仲良くするためにパーティーを企画する。

テレビのシリーズと前作の劇場版とは、全然、違うストーリーが走り出している。

そこには、逃避ではなく、自発的な戦いが描かれている。
絶望ではなく、希望が描かれている。熱い血が流れ出したのだ。
日本の正統派アニメ「エヴァンゲリヲン」の誕生である。もう、エヴァは、オタクだけのものではない。


誰のために戦い、誰を信じるのか。それが明確になったとき、アイデンティティーは再生される。
その目標のために沸き上がる「人間のカタチをしていないもの=あるまじき力」を知ることこそ、人間の覚醒なのである。それは、日本の再生に直結する。

とてつもない日本のエヴァンゲリヲン。

「とてつもない日本」は、現内閣総理大臣・麻生太郎の著書である。
その中では、世界に認められた日本のソフトパワーを礼賛し、鼓舞している

日本の技術やポップカルチャーが認められ、世界化していることは素晴らしい。
しかし、その現象を無邪気に誇ったり、自慢したりするのは、大人げないと思う。

日本の正統派アニメ「エヴァンゲリヲン」は、アメリカに受け入れられそうもない。世界化することは難しいだろう。
しかし、答えの出ないものに答えを出そうとする知性と物語力、その大きな神話をカタチにできる圧倒的な画力と技術は、それらこそ「とてつもない日本」である。


日本のポップカルチャーの凄さは、実は、「複雑で、わかりにくい」ところにある
ひと言で自慢できるようなものではないことを、「エヴァンゲリヲン」が教えてくれている。
©カラー
※記載の記事・画像などの無断転載・転用を禁止します。

中村修治(へそ社長)
有限会社ペーパーカンパニー、株式会社キナックスホールディングスの代表取締役。
資本主義の手先である広告代理店のブレーンとして暗躍する一方、多くの企業の事業立ち上げにも参画する滋賀県出身の戦略プランナーであり、コンセプターである。

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