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[アジアンビートオリジナル ポップカルチャーコラム vol.9]
漫画のチカラ。『仁-JIN-』で現実逃避する日本人!?
豪華キャストで挑んだテレビドラマが軒並み低視聴率に苦しむ2009年。そんな時代に、比較的地味なキャスティング(ジャニーズが出ない!)ながら高視聴率のまま最終回を迎える『仁-JIN-』。
なぜ今この作品なのか。まだ連載が続いている原作から紐解いてみた。
なぜ今この作品なのか。まだ連載が続いている原作から紐解いてみた。
今だから求めたい“人間味”
原作者の村上もとか(ちなみに男性)は、アラサー世代ならテレビアニメでよく知っている『六三四の剣』を生み出した人物。
他にも昭和初期の日本と中国を舞台にした歴史マンガ『龍-RON-』など手がけた作品は数しれず。いずれも入念な下調べに裏付けされた緻密な構成で、人生を熱く描いている。
けして派手な漫画家ではないのだけれど、今考えれば超がつくヒット作を作れる作家なのだ。
そんな村上作品の中で、『仁』のように「タイムスリップ」の要素を加えてきたのにはファンも戸惑ったはず。
ある部分でリアルさが魅力だった村上作品に一見“荒唐無稽”と思える設定が登場するのだから。
タイムスリップものと言えば「ドラえもん」や「タイムボカン」が真っ先に思いつくように、どちらかというと“子供向け”なイメージもある。
だが、『仁』は違う。
“幕末に現代医学を修得した医師が存在したら”という設定を、真剣にシミュレーションしている。
もしご都合主義だけのタイムスリップなら、直らない病気を現代医学がバッサバッサと解決してヒーローに、なんていう陳腐なものになるだろう。
だけど、主人公の南方仁は歴史を変えてしまうかもしれない自分に苦悩し、医学の限界に直面し、と苦悩しながらも前へ進む。
そこに人間ドラマとしての深さと温かさを感じる。
村上もとかという人は、ヒューマニズムに集約されるのだと改めて気づかされる。
買い物もすっかりネットが当たり前の現代、漫画の南方仁のように苦労して医療器具をそろえたりする姿はなんだか懐かしい。意外な癒し効果があるのかもしれない。
他にも昭和初期の日本と中国を舞台にした歴史マンガ『龍-RON-』など手がけた作品は数しれず。いずれも入念な下調べに裏付けされた緻密な構成で、人生を熱く描いている。
けして派手な漫画家ではないのだけれど、今考えれば超がつくヒット作を作れる作家なのだ。
そんな村上作品の中で、『仁』のように「タイムスリップ」の要素を加えてきたのにはファンも戸惑ったはず。

タイムスリップものと言えば「ドラえもん」や「タイムボカン」が真っ先に思いつくように、どちらかというと“子供向け”なイメージもある。
だが、『仁』は違う。
“幕末に現代医学を修得した医師が存在したら”という設定を、真剣にシミュレーションしている。
もしご都合主義だけのタイムスリップなら、直らない病気を現代医学がバッサバッサと解決してヒーローに、なんていう陳腐なものになるだろう。

そこに人間ドラマとしての深さと温かさを感じる。
村上もとかという人は、ヒューマニズムに集約されるのだと改めて気づかされる。
買い物もすっかりネットが当たり前の現代、漫画の南方仁のように苦労して医療器具をそろえたりする姿はなんだか懐かしい。意外な癒し効果があるのかもしれない。
原作は2000年にスタートしているが、今年に入ってドラマと共に盛り上がっているのにも理由がありそうだ。
あくまで一過性のものかと思われた“歴史ブーム”が、サブカルチャーの域を脱して確立されつつあることがひとつ。
始めは「戦国BASARA」などゲームのイケメンキャラが火付け役、続いて妻夫木聡などイケメン揃いの大河ドラマがそれを後押ししたようで、気づけばサブカルとメインストリームのボーダーラインを突破していたようだ。
そして、歴史は歴史でも幕末ということで、これがさらに『仁』人気に拍車をかけている。
2010年の福山雅治主演の大河ドラマもまさに幕末な訳だが、どうやらこの不況下の日本と関係がありそうだ。“民主政権交代”に対しての“明治維新”、ヒーロー不在の今に対する幕末の志士達。
閉塞感しかない今の日本に暮らす我々から見ると、まだ見ぬ時代への期待感に溢れた幕末は、眩しく映る。
あくまで一過性のものかと思われた“歴史ブーム”が、サブカルチャーの域を脱して確立されつつあることがひとつ。
始めは「戦国BASARA」などゲームのイケメンキャラが火付け役、続いて妻夫木聡などイケメン揃いの大河ドラマがそれを後押ししたようで、気づけばサブカルとメインストリームのボーダーラインを突破していたようだ。
そして、歴史は歴史でも幕末ということで、これがさらに『仁』人気に拍車をかけている。
2010年の福山雅治主演の大河ドラマもまさに幕末な訳だが、どうやらこの不況下の日本と関係がありそうだ。“民主政権交代”に対しての“明治維新”、ヒーロー不在の今に対する幕末の志士達。
閉塞感しかない今の日本に暮らす我々から見ると、まだ見ぬ時代への期待感に溢れた幕末は、眩しく映る。
演技派ぞろいのドラマ版『仁-JIN-』
美しい主題歌も人気。
『仁』にはそんな“希望に満ちた時代=幕末"をもう一度体験しているような錯覚をさせる力がある。
またその逆に、物質的にずっと恵まれた”今”に少しだけ安心もする。
つまり南方仁という未来から来た人間によって、過去が書き換えられるかもしれないというある種の不安定感があるからこそ、もう確定してしまった歴史物語を読むよりも先が読めない楽しさがあるのだ。
間もなく終了するドラマ版から、まだまだ連載中の原作にシフトして、もう少しの間、浮き世の辛さを忘れてはどうだろう?
またその逆に、物質的にずっと恵まれた”今”に少しだけ安心もする。
つまり南方仁という未来から来た人間によって、過去が書き換えられるかもしれないというある種の不安定感があるからこそ、もう確定してしまった歴史物語を読むよりも先が読めない楽しさがあるのだ。
間もなく終了するドラマ版から、まだまだ連載中の原作にシフトして、もう少しの間、浮き世の辛さを忘れてはどうだろう?
マンガ「仁-JIN-」作品情報

『仁-JIN-』村上もとか(著)/ジャンプ・コミックスデラックス
1~16巻発売中(2009.12.18現在)
スーパージャンプにて連載中!
最新17巻は2010.1.4に発売予定です。
■ 原作ホームページでこれまでのストーリーがチェックできます
http://sj.shueisha.co.jp/contents/jin/
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クラフトマン
30代前半。男。福岡の編集者。仕事柄映画やアニメをよく観るが、高専ロボコンと釣りが人生最高の楽しみ。今は特に博多湾・玄界灘で盛んな、ヒラマサのルアーフィッシングに没頭中。稼いだ金は釣り具と釣行費に注ぎ込んで、食事はもっぱら釣った魚。