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[アジアンビートオリジナル ポップカルチャーコラム vol.17]
美人画・今昔物語
突然ですが、本屋大賞というものをご存知ですか?
毎年、全国書店員が「売りたい!」と思う本に票を入れて選ぶ
まさに本好きによる本好きのための大賞。
2007年にノミネートされ、僅差で2位となった「夜は短し歩けよ乙女(森見 登美彦著)」という作品がある。
主人公の大学生の男の子が、後輩の女の子に恋をする、いわゆるラブストーリーで、
舞台が京都でそのヒロインがはんなりとした黒髪の古風な京美人。
本屋大賞第2位というだけあって、もちろん文句なしに面白い内容であるのだけれど、もうひとつ注目したいのが表紙の装画。
小説の中のヒロインがイメージそのままに描き出されている。
なんだか懐かしさを感じさせる横顔。
描き手は中村佑介さんというイラストレーターで
竹久夢二にも似たそのノスタルジックな作風が人気だ。
書籍以外にもCDジャケットなども手掛け、2009年には初の作品集「Blue」が刊行され、全国各地でサイン会やトークショーが行われている。
毎年、全国書店員が「売りたい!」と思う本に票を入れて選ぶ
まさに本好きによる本好きのための大賞。

主人公の大学生の男の子が、後輩の女の子に恋をする、いわゆるラブストーリーで、
舞台が京都でそのヒロインがはんなりとした黒髪の古風な京美人。
本屋大賞第2位というだけあって、もちろん文句なしに面白い内容であるのだけれど、もうひとつ注目したいのが表紙の装画。
小説の中のヒロインがイメージそのままに描き出されている。
なんだか懐かしさを感じさせる横顔。
描き手は中村佑介さんというイラストレーターで
竹久夢二にも似たそのノスタルジックな作風が人気だ。
書籍以外にもCDジャケットなども手掛け、2009年には初の作品集「Blue」が刊行され、全国各地でサイン会やトークショーが行われている。
「Blue:中村佑介」



竹久夢二にも似た、と言ったが
中村さんの作風は絵本作家・林静一さんの影響を受けてるそう。
小梅ちゃんでお馴染み。
そして林さんのタッチは竹久夢二の系譜を受け継いでいると評されている。
作風が引き継がれながら、時代時代の美しさをまとった「美人画」。
その昔と今を追ってみよう。
まず「美人画」を辞書でひいてみると
「女性の美しさを主眼にした絵。特に日本画で、浮世絵やその伝統を受け継いだ作品」とある。
浮世絵師の菱川師宣(ひしかわ もろのぶ)の「見返り美人図」はあまりにも有名だ。
歩みの途中でふと足を止めて振り返るその姿。
艶やかな着物と、当時流行していたという帯の「吉弥結び」が目を惹く。
菱川師宣の登場以降、美人画は浮世絵の中で多く描かれるようになった。
「見返り美人図」

「女性の美しさを主眼にした絵。特に日本画で、浮世絵やその伝統を受け継いだ作品」とある。
浮世絵師の菱川師宣(ひしかわ もろのぶ)の「見返り美人図」はあまりにも有名だ。
歩みの途中でふと足を止めて振り返るその姿。
艶やかな着物と、当時流行していたという帯の「吉弥結び」が目を惹く。
菱川師宣の登場以降、美人画は浮世絵の中で多く描かれるようになった。
「見返り美人図」

美人画と言えば、喜多川歌麿の存在も欠かせない。
全身像が当たり前だった当時、
歌麿はより対称に寄った新たな構図で女性の表情を切り取った。
全身像が当たり前だった当時、
歌麿はより対称に寄った新たな構図で女性の表情を切り取った。
「ビードロを吹く女」


「すだれ美人」


「寛政の三美人」


数々の名画を生み、美人画の第一人者として人気を博した。
その他、鳥居清長や葛飾北斎など数々の浮世絵画家が登場したが
時代と共に新たな画風が生まれる。
竹久夢二の登場だ。
その作品は「夢二式美人」と呼ばれ、
大正ロマンを代表する画家として一世を風靡した。
浮世絵の流れをくみながらも、情緒的な独特のタッチ。
夢二は処女作の画集の序文にこんな言葉を残した。
「ある時、私は文字の代りに絵の形式で詩を画いてみた」。

その他、鳥居清長や葛飾北斎など数々の浮世絵画家が登場したが
時代と共に新たな画風が生まれる。
竹久夢二の登場だ。
その作品は「夢二式美人」と呼ばれ、
大正ロマンを代表する画家として一世を風靡した。
浮世絵の流れをくみながらも、情緒的な独特のタッチ。
夢二は処女作の画集の序文にこんな言葉を残した。
「ある時、私は文字の代りに絵の形式で詩を画いてみた」。

詩人でもある夢二は、心にある感傷を言葉ではなく絵の中に表現したのだ。
なので、夢二が残した作品と夢二の恋愛遍歴はよく並べて語られる。
スキャンダルにもなったその愛憎劇は夢二を語る上で欠かせないストーリーだ。
(その話しは長くなるので割愛しますが、興味がある方は調べてみてください。なかなか激しい恋愛模様です。)
なので、夢二が残した作品と夢二の恋愛遍歴はよく並べて語られる。
スキャンダルにもなったその愛憎劇は夢二を語る上で欠かせないストーリーだ。
(その話しは長くなるので割愛しますが、興味がある方は調べてみてください。なかなか激しい恋愛模様です。)
そして外国への憧れを抱く大正という時代の中で、
港の風景や洋装など異国的要素を取り入れた作品が多いのも特徴のひとつだ。

港の風景や洋装など異国的要素を取り入れた作品が多いのも特徴のひとつだ。

さらに時代は進み、終戦をむかえた日本。
美人画はこのあたりから枝分かれをはじめるように思う。
敗戦の悲しみに暮れている日本で「美しく生きる」ことを提案した中原淳一。
浮世絵の要素は薄れてはいるが、夢二の影響が強く感じられる。

美人画はこのあたりから枝分かれをはじめるように思う。
敗戦の悲しみに暮れている日本で「美しく生きる」ことを提案した中原淳一。
浮世絵の要素は薄れてはいるが、夢二の影響が強く感じられる。

ただし、中原淳一が主に描いたのは「少女」。
「自分らしく、人生を楽しんで生きる」
そんな女性に育って欲しいと、戦後の混乱の中、雑誌「ソレイユ」を誕生させた。
大きな瞳に結い上げられた可愛い髪型。カラフルなファッション。
女の子達は夢中になり、
男の子でさえ、お姉さんの部屋にこっそりと入って盗み読みしたそう。

「自分らしく、人生を楽しんで生きる」
そんな女性に育って欲しいと、戦後の混乱の中、雑誌「ソレイユ」を誕生させた。
大きな瞳に結い上げられた可愛い髪型。カラフルなファッション。
女の子達は夢中になり、
男の子でさえ、お姉さんの部屋にこっそりと入って盗み読みしたそう。

森英恵や高田賢三、コシノジュンコなどのファッションデザイナーにも多くの影響を与えた。
今までにない「憧れ」を抱かせるオシャレな少女画であったのだ。
今までにない「憧れ」を抱かせるオシャレな少女画であったのだ。
その系譜は内藤ルネ、高橋真琴らに引き継がれ
少女漫画の原点となった。

少女漫画の原点となった。


目の中のキラキラとした輝き。クルンとカールがかかったヘアスタイル。
浮世絵とは全く異なるものの、美しい女の人であることには違いない。
洋の文化が日本に浸透し、女性像もその影響を受けている。
一方、中村佑介さんのような
現代の少女を夢二を思わせるノスタルジックなタッチで描く作家もいる。
切れ長の黒髪。日本独自の美がそこにはある。
浮世絵とは全く異なるものの、美しい女の人であることには違いない。
洋の文化が日本に浸透し、女性像もその影響を受けている。
一方、中村佑介さんのような
現代の少女を夢二を思わせるノスタルジックなタッチで描く作家もいる。
切れ長の黒髪。日本独自の美がそこにはある。
そして浮世絵からの流れとそこから分離する少女漫画への流れの
丁度中間に位置するんじゃないかと
私が勝手に解釈しているのが「萌え画」。
巫女など和の要素がありつつ、目はキラキラ。
米やお酒のパッケージに使われたりもしている。
丁度中間に位置するんじゃないかと
私が勝手に解釈しているのが「萌え画」。
巫女など和の要素がありつつ、目はキラキラ。
米やお酒のパッケージに使われたりもしている。

江戸時代から描かれ続けた美人画。
この先どんな進化を遂げるのだろう。
例えばいつか宇宙人が現れて、交流を深めるうちに
美人画も宇宙人っぽくなったりして。
宇宙で通用する美人画、いつか見れるだろうか?
この先どんな進化を遂げるのだろう。
例えばいつか宇宙人が現れて、交流を深めるうちに
美人画も宇宙人っぽくなったりして。
宇宙で通用する美人画、いつか見れるだろうか?

生野 朋子
fookの屋号で編集・デザインを本業とするかたわら、インターネット古書店「yojohon」を運営。秋に行われる本のイベント「BOOKUOKA」主催。言わずもがな趣味は読書で、暇な日は400Pくらいの文庫×3冊を1日で読破する速読者。
yojohon http://www.yojohon.com
BOOKUOKA http://www.bookuoka.com