[アジアンビート責任編集] 「マタギキ」 第二章 質問篇(1/2)
前へ | 次へ

「熱狂するって、これがクリエイティブでしょう! 」 amadana創始者 熊本浩志氏 史上初のノーカット1万字インタビュー 第二章 質問篇

熊本さんの周りにはいろんな才能を持った人がいると思うんですが、周りの人を巻き込む人脈術みたいなものがあれば教えてください。
熊本:正直今はまったく分からないですよ(笑)
確かに、会う人全てが友達になってくれるんです。今はアマダナというブランドが出来たからこそ、出来てきた人脈でもあると思います。ただ、若い頃って損得じゃなくて、この人の話を聞きたいって人に全力でぶつかって、全力で返してくれるから分かり合えたと思います。若い時って、とにかく常に社長に会わせてくれって言ってましたね。そこで相手に何を残せるかっていうのが重要で。だから会う時はひたすら相手のことを本やネットで調べて、話をして、「お前わかってるな」なんて(笑)。そんな感じでしたね。上っ面で話をしない、真剣に話をして向き合うって言うのが大事です。基本的に熱くないとダメだと思います。(笑)
小柳:二つ目の質問です。
商品開発の仕事をしているんですが、ヒット商品のセオリーがみえなくなってきています。今の消費者の変化についてどうお考えですか?
熊本:情報がありすぎるし、何でもそろってるから昔に比べると絶対に手に入れたいっていうものの意識が下がってきていると思うんです。
僕らがいまものを作るときに心がけているのが、全てを数字にしないことなんです。
例えば設計図って数字じゃないですか。
スペックって数字じゃないですか。でも、
今のお客さんってスペックでものを語らないじゃないですか。
例えばお腹がすいたとき、“ガッツリ”食いたいっていうじゃないですか。それは数字じゃない。
何食べたい?ってなっても“重めで渋めな”とか。そんな感じで商品の軸っていうのがそういう風に変わってるんですよね。例えば、シェーバーのCMって、去年三枚だったのに、今四枚になってるじゃないですか(笑)。
価値次元が見えるものが昔は評価が高かったんです。
例えば、スペックに表れる3枚より4枚とか、20ギガより40ギガの方がこれだけすごいとか。で、それに対する対価がいくらという感じだったけど、今は違うんですよね。僕らは価値次元が見えない方が良いと思っていて。「なんか分からないけど、いいよね」って言われる方が今の時代絶対強いんですよ。

熊本:お蔭様で、携帯電話がヒットして100万台くらい売れました。
アマダナを知った人が増えたんですけど。そこで思ったのが、アマダナというブランドを考えた時に、3千台しか売れないものと100万台売れるものが同じブランドの中に共存するんだろうと思いました。
値段ではないし、売り方でもないし、何なんだろうと思って。
今までは例えばコーヒーメーカーだったらその中で機能があり、その延長線上にデザインがあり、ただカテゴリーはコーヒーメーカーだったんです。
そのカテゴリーを作ることに興味があって。カテゴリーを作ることをカテゴリーイノベーションっていうんですけど、これは昔からあって。
例えばソニーのウォークマン。それまで音楽を外で聞くということはありえなかったんですよね。その当時言われてたのが、こんな録音機能のついていないカセットデッキを誰が買うんだと。もうひとつが、音楽を歩きながら聞くなんて危ないんじゃないかって。当時はそんな感じで。ただ予想を反して今では世界的になっていて、それはカテゴリーですよね。
もうひとつは、「写るんです」。当時は一家に一台一眼レフがあって、お父さんがもっているもので触らせてもらえなかったじゃないですか。写真って子供が撮ってはいけなかったんです。今まで写真というとプロが撮ったものしかなかったのが、『写るんです』が出たおかげで、それぞれが写真を撮ることができるようになった。子供も子供視点の写真が撮れるようになった。それがさらにデジカメやポラロイドになるという形で進化して。
ハードの登場によってコンテンツが進化して行く。
ポラロイドっていうのは、その場で見れるからすごかったんですよ。
そしてデジカメができることによって、捨て撮りができるようになった。そしてデジタルになったことによってウェブ上にあげられるとか、共有できるとか複写できるようになった。
今度は携帯にデジカメがついた。これによって、デジカメが脅かされると言った人がいたんですよ。ただ、携帯のカメラが進化しても、デジカメの出荷台数は落ちなかったんですよ。
なぜかというと、写真を撮る時ってみんな使い分けてるんですよね。シーンや重要度に応じて。
例えば残す写真はデジカメでおさえて、飲み会の写真は今度あいつに見せたいからコミュニケーションツールとして撮っておこうとか。このように日常の静止画っていうスナップが増えてきたんですよね。ところが、動画っていうのはソニーからビデオカメラが出てきてからずっと20年くらいず今まで運動会を撮ってるんですよ。

カメラがプロの写真しかない時代から進化してるのに、動画は全く進化してないんですよ。
それは日常におちてきていないから。
僕らはこれを動画リゼーションって呼んでるんですけど。
モータリゼーションのパクリですが(笑)これは車ができることで道が整備され、ガソリンスタンドが整備され、いろんなビジネスやサービスがうまれてきた。
僕らは動画リゼーションとして、日常にもっと動画を残して行こうじゃないかと。例えば、今ハンディカムがたくさん出てますが、ハンディカムを鞄から取り出したら、ただの変態だと思われちゃいますから(笑)。だからもっと日常に動画を楽しく撮れて、シェアできるものが作りたいと。今撮ったものをパソコンにさせばアップされていくし、本体同士をつなげば動画をシェアできるというコミュニケーションツールなんですよ。
そうすれば、動画の方が圧倒的に生活にシズル感があるじゃないですか。
スペックじゃないんですよ。
ポケットに入って、すぐ撮れて、なおかつすぐ見れてシェアできて楽しい。これだったら変態じゃないじゃないですか。デジカメが今のように浸透し、撮る方も撮られる方も慣れているんですが、動画って実は撮り慣れても撮られ慣れてもいないんですよ。
ただ、皆動く自分が写り、次は音声が入り、だんだんとカメラの前でのパフォーマンスがうまくなってくるんですよ。これが動画リゼーションですよ。
小柳:視点の切り替えで新しい商品が生まれてくるんだなって思いましたね。
それでは三つ目の質問です。
アマダナといえば、デザインが良いブランドというイメージがありますが、ヒットの理由はそれだけなんでしょうか?
熊本:僕自身の意見なんですけど、デザインって色とか形のことを言ってないと思うんですよ。だってその人にデザインのどこがいいの?って聞いても答えられないと思うんですよ。僕もそうなんです。なんとなくアマダナっていいよねっていうエピテーションデザインなんですよ、きっと。風評なんです。色とか形だけじゃなくて、どうコミュニケーションしてもらうかっていうのも含めてデザインなです。例えば、SALっていうのもぎりぎりまでネーミングに迷ったんです。こだわったのは、すっと表れる彗星感と、言葉の違和感なんです。「○○ショット」とかネーミングだったらそのまま終わっちゃうんですよ。SALというネーミングだったら音感として止まるし、印象に残るじゃないですか。だから得なんですよ。SALっていうのはSmile And Laughっていって、世界中に笑顔と笑い声をってことなんです。スマイルは写真で撮れるけど、笑い声は動画でしか撮れないんです。だから、ネーミングも含めてデザインなんです。
前へ | 次へ