「鼓動」2010年11月15日
アンコウ鍋

アンコウの水揚げが多いのは、北関東とばかりと思っていたら、実は下関が全国一でダントツの水揚げらしい。日本海の萩沖や対馬沖で底引き網に入るという。大きいものは全長1.5メートルを超えるものもあるそうだ。体形は楽器の琵琶に似ていて、アタマは大きく平たい。口はすこぶる大きい。その大きな口を一日中開けて、背びれから伸びた疑似餌をゆらゆらとさせて、小魚を誘う。餌に気を取られた小魚が口元に近づいたところをパクリとやる。グロテスクな姿であるにもかかわらず、憎めないのは、このおかしな習性による。
鮟鱇のこのほほゑみの顔を見よ 今井 杏太郎
月光の妖しい光に誘われて深い海から出てきたところを、網にかかって陸に揚げられたしもうた。
今や大鉤にブザマに吊るされ、この身は切り刻まれる時を待つばかりだ。
満月があれほど艶めかしくなければ、ふらふらとさまようこともなかったのだが・・・。
いまさら言うても詮無いことだ。
これも運命というやつだろう。ならば甘受し、この期に及んでは、安らかであろう。
そうさな、東洋の賢者の如きほほえみを残してやろう。
これぞ、アンコウの微笑みというやつを。
と、ここまで書いて、市場に出回るのはメスのアンコウだったと思い出した。卵巣のないオスは大きくはならず、商品価値がないといわれる。
アンコウ鍋は、肝をつぶした味噌仕立て。木枯らしが吹き始めたそのころから身が締まって旨くなるようだ。もちろん女性の方々にも人気のコラーゲンたっぷりだ。(IK)