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FUKUOKA CREATORS / vol.020 松山洋(2/4)
せっかくなら世界中の人に一人でも多く楽しんでもらいたい。
●サイバーコネクトツーが手掛けた「NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットストーム」シリーズの最新映像。
――数年前と比較するとゲーム制作会社は増え、特に福岡はサイバーコネクトツーやレベルファイブ、ガンバリオンなどゲーム制作会社が多く、競争の激しい業界だと思いますが、サイバーコネクトツーのカラーを現すとしたら?
松山:独自のカラーという点では、我々は作る以上は“世界で売る”ってことを考えてます。これが基本的な考え方。日本でしか売らない、日本人にしか分からないものは作らないと決めています。ゲームは国境を越えるので、言葉が分からなくても面白いのがゲームなんです。アニメも漫画も、映画も言葉が分からないと理解しにくい。でも、ゲームにはジャンプして、敵を倒してっていう気持ち良さが真ん中にあって、ストーリーはそれをより楽しむための仕掛けとして存在する。大半の部分は言葉が分からなくても楽しめるのがゲームなので、せっかくなら世界中の人に一人でも多く楽しんでもらいたいんです。なので、他のゲーム会社が作ったタイトルに似ていないものを作るってことに関しては、口をすっぱくして言っていますね。そのためには、私は日本人の強みを活かしたモノ作りをするように決めています。それが弊社のケースにあてはめると、演出だったり、マンガやアニメといった日本が誇る文化だと思っています。
――世界を視野に入れた作品作りという点で、海外での反応はどうですか?
松山:「NARUTO-ナルト- ナルティメット」シリーズだと、「NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットストーム3」は世界累計生産が200万本を超えています。世界130ヶ国で販売しているんですけれど、ボイスは英語と日本語。テキストは、9言語ですね。200万本の内訳は100万本は北米・南米、ヨーロッパで76万本、日本を含むアジアで24万本、そのうち14万本が日本です。つまり、日本での売上は7%で、これが今の日本市場です。9割は海外なんですよ。だからといって、海外で売れるためにどうするなんてことは考えていない。自分たちがすごいと思うものを作れば、彼らもすごいって思ってくれるんです。ただ、世界を視野にして勝負するために、1点気を付けないといけないのは、嫌われないこと。世界には、文化や宗教上の問題があるので、不必要なことはしない。日本人はあまりピンと来ないかもしれないですけど、世界には様々な宗教があふれていますから。
安心して選んでもらう1本にするためには、作っている人間が誰なのかを示すことが大事。

●2014年7月2日~7月6日にフランスパリで行われた「JAPAN EXPO 2014」での「NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットストームレボリューション」プロモーションの様子。
(c)岸本斉史 スコット/集英社・テレビ東京・ぴえろ
(c)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.
――クリエイターでありながら、代表取締役もありますが、どのように頭を切り分けているんですか?
松山:私の仕事は大きく3つあります。1つは社長業、もうひとつはクリエイター、そしてもう一つが宣伝広告塔としての役割ですね。サイバーコネクトツーという会社を知ってもらうために、私自身が広告塔として活動しています。モノ作りという点においては、私が全体のディレクションはしますが、詳細は優秀なスタッフたちに任せています。宣伝広告に関しては、宣伝チームがいて、彼ら主導で宣伝も行ってくれていますが、私自身は福岡と東京を行き来し、今回のインタビューや、イベントのステージ出演はもちろん、メーカーとの打合せや番組配信など、色んなところで露出をして、会社を知ってもらうために日々活動をしています。そう考えると、ある意味一番疎かなのは経営かもしれませんね(笑)。もちろん、最高責任者としての責務は果たしていますが、スタッフに支えてもらっています。弊社は開発以外のスタッフが20数名いるんです。この規模の会社では多い方で、例えば宣伝広報だと通常1~2名のところ、うちは8人もいるんです。でも、選ばれる会社にするためには、広報が大切なんですよ。だって、配給会社で観る映画を決める人はいないでしょ。普通は「監督は誰?」「脚本は誰?」「出演者は誰?」「ジャンルは?」という情報で観たい作品を選ぶと思うんです。安心して観れる作品の多くは、宮崎駿監督の作品だから、北野武監督の作品だから、と作っている人の顔が見えているんですよ。誰が出ているか、誰が作ったか分からない映画なんて誰も観ないんです。これは、エンタメ業界全て一緒で、もちろんゲーム業界も同じです。安心して選んでもらう1本にするためには、面白いモノを作ることは当たり前で、作っている人間の誰かが顔を出すことも重要。だから、私が最初に掲げたのは、歌って踊れるディベロッパーになることだったんです(笑)。開発者も開発しているだけじゃダメで、外に出て一人でも多くの人に会って名刺を配りなさい、会社の看板を背負って歩きなさいと言い聞かせてます。それが選ばれる1本に繋がるんですよ。
→松山洋氏に訊く、氏のターニングポイントや作品作りについて大切にしているものとは。