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特別インタビュー(4/5)

『劇場版 TIGER & BUNNY-The Beginning-』の監督を務める米たにヨシトモ氏に、監督になったきっかけや、今作のみどころなどについて訊いてみた。
“私自身も、観客の一人として楽しめる作品”をつくるという気持ちでここまで来ました。
asianbeat(以下、ab):アニメーション監督を目指したきっかけは?
米たにヨシトモ氏(以下、米たに):実は子供の頃から友達と遊んでいる時も「おまえは○○役で○○をしているシーンな」というようなシチュエーション設定で演技させる遊びがすごく好きだったんですよ。それが監督の仕事だとは知らずに、ただそういう遊びが好きで、一人で遊んでいる時にもシリーズ構成をするんです。今日は1話だから何が出てきてとか。夜寝る時も首をゆっくり横に振って、見渡した室内の情景バックに「提供は○○でした」とかテロップと音声が出る様子を頭に浮かべて寝るみたいな。人生がまるで番組になっているような妄想の人だったんで、監督を目指したというよりは、最初から監督をやっていたという印象でした。中学・高校時代は、創造表現みたいなものをすごくしたくて、漫画家になることも考えていました。ただ、自分の漫画がアニメ化された時に、変な風にいじられるの嫌だなと思って、じゃあちょっとアニメも勉強しておこうということで専門学校に入ったら、すごく面白くて。画が動く、色が付いている、音楽が流れる、台詞や効果音が聴こえるなど、表現がすごく豊かだと思ったんです。実写映画も学生の頃に撮ったりしていたんですけれど、CGなんかない時代。実写だと実現不可能な場面も、アニメなら画で描けばいい。そういった未知数の可能性がすごくあるなと思って続けて、現在に至った感じです。
ab:作品作りにおけるモットーは?
米たに:どっちかっていうと私の場合、人を楽しませたいという思いが強いんですよ。小学生の時からオリジナルストーリーの紙芝居を作ってクラスのお楽しみ会でお披露目するのが大好きでした。人が笑ったり怯えたりする反応を見るのが楽しくて、今もその延長線上にいます。
ab:ご自身のなかで大事にされている、アニメ作品やキャラクターは何かありますか?
米たに:怪獣ブーム時に育っているので、怪獣がすごく好きです。東宝主催のクイズに全問正解し、怪獣博士に認定されたこともありました。“怪獣こそ我が命”みたいなところがありますね。本当は怪獣映画の監督とかもやりたかったんですけど、ブームが去って、怪獣映画自体がなくなってしまった時期があったんです。そこで漫画やアニメに傾いたんですが、中二病じゃないですけど、もうアニメなんか幼稚でつまらないと感じてしまう時期もあって。そういう時期に『宇宙戦艦ヤマト』や『未来少年コナン』、『機動戦士ガンダム』など、それまでのアニメとは違うものを作る監督が出てきてくれたので、まだまだアニメーションには表現力の可能性があるなと思って興味が戻ってきました。魂を揺さぶられた、その時期のアニメーション作品にはとても感謝しています。
ab:テレビアニメ版の『TIGER & BUNNY』を映画化する際に意識した点は?
米たに:この作品は、さとうけいいち監督の後を引き継ぐ際に、今まであったものも一緒に引き継いでいます。なので、視聴者に対して、作品観を変えて裏切りたくないという気持ちはすごくありました。自分が描いたTV一話の絵コンテが受け入れられたことを自負に、監督をこなす上でも、そのテイストで劇場版制作に向かっていけばいいのかなっていう意気込みはありました。ですが、なかなかそれを『TIGER & BUNNY』らしく作っていくっていうのが難しくて。その“らしさ”から逸れていくと観客も離れていくと思うんですよ。ガンダムシリーズもそうですが、どうしてもファースト崇拝っていうか、最初にあったものを心の財産としている人もいるので。その深い愛を壊さないように、なおかつ、マンネリに陥らない方向性を見出すまでに、とても苦労しました。スタッフ皆ともディスカッションして作っていったので、一人の力ではここまでできなかったですね。ファンの方々とも一緒にここまで来させてもらった気分です。
ab:米たに監督にとって『TIGER & BUNNY』とは?
米たに:“私自身も、観客の一人として楽しめる作品”というところでしょうか。企画当初から『TIGER & BUNNY』の現場にはいたんですけれど、最初スタッフの皆も「本当にこのアニメ受けるのか?」とか「立体好きの男子はヒーローのフィギュアを買ってくれるだろうか?」とか言っていたんですけど、まさか女性までもが並んで買うとは誰も想像してなかったです(笑)。この現象に自分も乗れたことがすごく嬉しいですね。ファンの方々には本当に感謝しています。
ab:今回の『劇場版 TIGER & BUNNY-The Beginning-』のみどころは?
米たに:細かいところをすごく丁寧に作りこんでいますので、テレビと同じ画に見えていても、実は10回くらい何度もテイクを重ねて作り直したシーンもあって。スクリーンに映えるように全部調整して、音楽もすごく凝ってもらいました。やりつくした上で辿り着いた着地点なので、手ごたえはすごくあります。過去に、短編の「ザ☆ドラえもんズ」っていう映画をつくったんですけど、作り終わってからも何か「もうちょっとこうしたかったな」とか、どこか自分の中で百点に行かない感じがあったんです。だけど、今回の場合は点数関係なく突き抜けたというか、ぶっちぎっちゃったというか(笑)、かつてなかった手ごたえがありましたね。これがヒットしなかったらもう何やってもだめだなという気持ちです。というのも、この映画って、物凄く強い敵が出てきて、みんなでワーってやっつけて盛り上がるっていう映画ではないんです。王道のヒーロー映画に対する、ある意味でのアンチテーゼを突き詰めていって面白くできたのは、 “高い次元の魂”をスタッフ皆が持っていたからっていう気がしますね。是非その“魂”を感じ取っていただければと思います。
ab:作中の8人のスーパーヒーローのうち、なれるとしたら、どのヒーローになってみたいですか?(またその理由は?)
米たに:これは難しいですね。映画制作での役回りは、私はルナティックでいいと思ってたんですよね。自分の正義だけ貫くみたいな、孤独な感じが自分には向いているとずっと思っていたんですけど、映画一本作ってみたら、もっと輪の中に入っていったほうが、作品のクオリティを高める上でも得だなと自分自身変わってきた気がします。輪の中でどのヒーローになりたいかというと微妙なんですけど、キャラ的にはロックバイソンかなと思っています。「さあ、どうだ俺の肉体」って自慢するあのシーンがすごい好きで(笑)。あとは発射台のシーンでちょっと怖がっていたりとか。あのポジションですよ、私は(笑)。いろんな意味で、今回の劇場版は過去キャラをうまくフィーチャーすることに成功したかなと思います。やりたいと思っていても、メインスタッフのなかにも色んな思いがあって、それをどう織り込んでいくか、バランスをとるのがすごく難しくて。やりすぎちゃうと一人だけキャラが立ちすぎちゃったり、タイガーとバニーが薄くなっちゃったりするので、さじ加減の調整は何回もやり直しましたね。
実はこの作品、アニメでは絶対にやらなきゃいけない、キャラ専用の音楽をつけるっていう方法をとっていないんですよ。“スカイハイが来たらこの音楽”みたいなものはないですね。誰が来ても主役調の音楽がかかるんです。そうすると、どのキャラクターでも主役並みに際立たせることができます。そういう独自の方法論を通して、キャラクター皆で、そして作品全体で、『TIGER & BUNNY』を盛り上げる、底上げができるんです。通常のヒーロー作品だったら「誰なのか音楽で判別できないじゃん」って、没個性の駄作と言われちゃうんです本当は。けれど『TIGER & BUNNY』の場合は、それを逆手にとったことが、作品としての個性を際立たせる、プラスに働いています。そういう意味でも新しいんですね。
ab:『TIGER & BUNNY』はアジアをはじめ、今や世界中で愛されるアニメ作品の一つですが、その人気を感じることはありますか?(それはどのような場面ですか?)
米たに:イギリスや、フランス、アメリカ等の上映館から頼まれて、観客に向け、各国に合わせた監督コメントをテロップで出してもらいました。そのことに対する感想もいただき、向こうの方々も注目してるんだなというのは実感しましたね。上映会場によってはチケットがソールドアウトになったという情報もいただきました。
ab:サイトを見ている読者の方に一言お願いします。
米たに:スタッフ、キャスト、関係者、そして観てくれた皆さんと一緒に成長し、作りあげた『TIGER & BUNNY』です。ありがとう!と同時に、もっと楽しもう!そして、レッツエンジョイ!
米たにヨシトモ氏(以下、米たに):実は子供の頃から友達と遊んでいる時も「おまえは○○役で○○をしているシーンな」というようなシチュエーション設定で演技させる遊びがすごく好きだったんですよ。それが監督の仕事だとは知らずに、ただそういう遊びが好きで、一人で遊んでいる時にもシリーズ構成をするんです。今日は1話だから何が出てきてとか。夜寝る時も首をゆっくり横に振って、見渡した室内の情景バックに「提供は○○でした」とかテロップと音声が出る様子を頭に浮かべて寝るみたいな。人生がまるで番組になっているような妄想の人だったんで、監督を目指したというよりは、最初から監督をやっていたという印象でした。中学・高校時代は、創造表現みたいなものをすごくしたくて、漫画家になることも考えていました。ただ、自分の漫画がアニメ化された時に、変な風にいじられるの嫌だなと思って、じゃあちょっとアニメも勉強しておこうということで専門学校に入ったら、すごく面白くて。画が動く、色が付いている、音楽が流れる、台詞や効果音が聴こえるなど、表現がすごく豊かだと思ったんです。実写映画も学生の頃に撮ったりしていたんですけれど、CGなんかない時代。実写だと実現不可能な場面も、アニメなら画で描けばいい。そういった未知数の可能性がすごくあるなと思って続けて、現在に至った感じです。
ab:作品作りにおけるモットーは?
米たに:どっちかっていうと私の場合、人を楽しませたいという思いが強いんですよ。小学生の時からオリジナルストーリーの紙芝居を作ってクラスのお楽しみ会でお披露目するのが大好きでした。人が笑ったり怯えたりする反応を見るのが楽しくて、今もその延長線上にいます。
ab:ご自身のなかで大事にされている、アニメ作品やキャラクターは何かありますか?
米たに:怪獣ブーム時に育っているので、怪獣がすごく好きです。東宝主催のクイズに全問正解し、怪獣博士に認定されたこともありました。“怪獣こそ我が命”みたいなところがありますね。本当は怪獣映画の監督とかもやりたかったんですけど、ブームが去って、怪獣映画自体がなくなってしまった時期があったんです。そこで漫画やアニメに傾いたんですが、中二病じゃないですけど、もうアニメなんか幼稚でつまらないと感じてしまう時期もあって。そういう時期に『宇宙戦艦ヤマト』や『未来少年コナン』、『機動戦士ガンダム』など、それまでのアニメとは違うものを作る監督が出てきてくれたので、まだまだアニメーションには表現力の可能性があるなと思って興味が戻ってきました。魂を揺さぶられた、その時期のアニメーション作品にはとても感謝しています。
ab:テレビアニメ版の『TIGER & BUNNY』を映画化する際に意識した点は?
米たに:この作品は、さとうけいいち監督の後を引き継ぐ際に、今まであったものも一緒に引き継いでいます。なので、視聴者に対して、作品観を変えて裏切りたくないという気持ちはすごくありました。自分が描いたTV一話の絵コンテが受け入れられたことを自負に、監督をこなす上でも、そのテイストで劇場版制作に向かっていけばいいのかなっていう意気込みはありました。ですが、なかなかそれを『TIGER & BUNNY』らしく作っていくっていうのが難しくて。その“らしさ”から逸れていくと観客も離れていくと思うんですよ。ガンダムシリーズもそうですが、どうしてもファースト崇拝っていうか、最初にあったものを心の財産としている人もいるので。その深い愛を壊さないように、なおかつ、マンネリに陥らない方向性を見出すまでに、とても苦労しました。スタッフ皆ともディスカッションして作っていったので、一人の力ではここまでできなかったですね。ファンの方々とも一緒にここまで来させてもらった気分です。
ab:米たに監督にとって『TIGER & BUNNY』とは?
米たに:“私自身も、観客の一人として楽しめる作品”というところでしょうか。企画当初から『TIGER & BUNNY』の現場にはいたんですけれど、最初スタッフの皆も「本当にこのアニメ受けるのか?」とか「立体好きの男子はヒーローのフィギュアを買ってくれるだろうか?」とか言っていたんですけど、まさか女性までもが並んで買うとは誰も想像してなかったです(笑)。この現象に自分も乗れたことがすごく嬉しいですね。ファンの方々には本当に感謝しています。
ab:今回の『劇場版 TIGER & BUNNY-The Beginning-』のみどころは?
米たに:細かいところをすごく丁寧に作りこんでいますので、テレビと同じ画に見えていても、実は10回くらい何度もテイクを重ねて作り直したシーンもあって。スクリーンに映えるように全部調整して、音楽もすごく凝ってもらいました。やりつくした上で辿り着いた着地点なので、手ごたえはすごくあります。過去に、短編の「ザ☆ドラえもんズ」っていう映画をつくったんですけど、作り終わってからも何か「もうちょっとこうしたかったな」とか、どこか自分の中で百点に行かない感じがあったんです。だけど、今回の場合は点数関係なく突き抜けたというか、ぶっちぎっちゃったというか(笑)、かつてなかった手ごたえがありましたね。これがヒットしなかったらもう何やってもだめだなという気持ちです。というのも、この映画って、物凄く強い敵が出てきて、みんなでワーってやっつけて盛り上がるっていう映画ではないんです。王道のヒーロー映画に対する、ある意味でのアンチテーゼを突き詰めていって面白くできたのは、 “高い次元の魂”をスタッフ皆が持っていたからっていう気がしますね。是非その“魂”を感じ取っていただければと思います。
ab:作中の8人のスーパーヒーローのうち、なれるとしたら、どのヒーローになってみたいですか?(またその理由は?)
米たに:これは難しいですね。映画制作での役回りは、私はルナティックでいいと思ってたんですよね。自分の正義だけ貫くみたいな、孤独な感じが自分には向いているとずっと思っていたんですけど、映画一本作ってみたら、もっと輪の中に入っていったほうが、作品のクオリティを高める上でも得だなと自分自身変わってきた気がします。輪の中でどのヒーローになりたいかというと微妙なんですけど、キャラ的にはロックバイソンかなと思っています。「さあ、どうだ俺の肉体」って自慢するあのシーンがすごい好きで(笑)。あとは発射台のシーンでちょっと怖がっていたりとか。あのポジションですよ、私は(笑)。いろんな意味で、今回の劇場版は過去キャラをうまくフィーチャーすることに成功したかなと思います。やりたいと思っていても、メインスタッフのなかにも色んな思いがあって、それをどう織り込んでいくか、バランスをとるのがすごく難しくて。やりすぎちゃうと一人だけキャラが立ちすぎちゃったり、タイガーとバニーが薄くなっちゃったりするので、さじ加減の調整は何回もやり直しましたね。
実はこの作品、アニメでは絶対にやらなきゃいけない、キャラ専用の音楽をつけるっていう方法をとっていないんですよ。“スカイハイが来たらこの音楽”みたいなものはないですね。誰が来ても主役調の音楽がかかるんです。そうすると、どのキャラクターでも主役並みに際立たせることができます。そういう独自の方法論を通して、キャラクター皆で、そして作品全体で、『TIGER & BUNNY』を盛り上げる、底上げができるんです。通常のヒーロー作品だったら「誰なのか音楽で判別できないじゃん」って、没個性の駄作と言われちゃうんです本当は。けれど『TIGER & BUNNY』の場合は、それを逆手にとったことが、作品としての個性を際立たせる、プラスに働いています。そういう意味でも新しいんですね。
ab:『TIGER & BUNNY』はアジアをはじめ、今や世界中で愛されるアニメ作品の一つですが、その人気を感じることはありますか?(それはどのような場面ですか?)
米たに:イギリスや、フランス、アメリカ等の上映館から頼まれて、観客に向け、各国に合わせた監督コメントをテロップで出してもらいました。そのことに対する感想もいただき、向こうの方々も注目してるんだなというのは実感しましたね。上映会場によってはチケットがソールドアウトになったという情報もいただきました。
ab:サイトを見ている読者の方に一言お願いします。
米たに:スタッフ、キャスト、関係者、そして観てくれた皆さんと一緒に成長し、作りあげた『TIGER & BUNNY』です。ありがとう!と同時に、もっと楽しもう!そして、レッツエンジョイ!
監督 米たにヨシトモ氏 プロフィール
■米たにヨシトモ
よねたによしとも
アニメ監督。1963年生まれ。代表作として「笑ウせえるすまん」(89~92)、「ザ☆ドラえもんズ」(96~99)、「勇者王ガオガイガー」(97~98)、「ベターマン」(99)、「BRIGADOONまりんとメラン」(00)、「Dororonえん魔くん メ~ラめら」(11)などがある。