[愛魂 vol.17] フリーマガジンFLJ編集長 大野俊也 ~リアリズムを追求し、常に時代のエッジをとらえたクリエイトを提供するマルチプロデューサー~(3/3)
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情報はネットを通じて知ってて当たり前。これからはどれだけ経験しているかが重要。

ab:大野さんが雑誌作りをはじめクリエイティブな部分で心掛けていることは?
大野:やっぱり、“ビンビン”くるかどうかじゃないかな(笑)。つまり直感だね。来るか、来ないかだよね。カッコいいモノとか、面白いモノって理屈なんていらないじゃん。その感覚って、現場に出なかったり、モノを見なかったら廃れると思う。人間はインプットを増やした方がアウトプットも増えると思うんだ。自分がラッキーだったのは、いろんなシーンやいろんな人を見れたことだと思うんだよね。音楽だっていろんなジャンルが好きだし、海外に何度も行ったのも良かったと思う。いろんな側面からいろんなモノを見た方が、選択肢が増えるし、感覚が磨かれていくよね。
ab:現場主義・リアリズムに通じる部分ですね。
大野:今の時代って、ネットで全部解った気になるじゃない。だとしたらそれって人と同じモノしか得られない。でも、本物を見たときの感動は全然違うし、そこが大事なんだ。情報はネットを通じて知っているのが当たり前で、これからはどれだけ経験をしているかっていうのがすごく重要になってくるよね。今日本は鎖国状態にあると思う。皆英語しゃべれないし、海外に行かないでしょ? 日本に居て、日本語だけを操り、日本のモノばかりを見てちゃダメなんじゃないかな。

2008年パンクスプリングのバックステージにてFLJ創刊号用の写真。RANCID、PENNYWISE、NOFX、難波章浩、ヒカルなど豪華メンツが揃う。
ab:その経験はやはり実際にアイデアとして反映されているんですか?
大野:そうですね。例えばフェスであれば、海外のヨーロッパにもアメリカにもすごく良いフェスがあって、良いところは取り入れようと思うし。パンクスプリングだってそう。パンクとかヒップホップが好きな人って、他のジャンルをあまり好きではないじゃん。大きなフェスでも、高い金払って好きなバンドが2、3コだけ出てても、辛いじゃない。でも例えばアメリカでワープド・ツアーに行くと、すごい数のバンドが昼間から1日中観れて、女の子も可愛いし、ライブ終わったらバーベキューとかやってて、「何これ! ずるくない?」って思って(笑)。でもこれってアイデアとして残るじゃない。1日中パンクだけのフェスをやりたくて、それがパンクスプリングになったりとか。全く同じものは出来ないけど、日本で似たようなことができないかな、とかね。
今の時代、情報を商売にするにはスピード感と、“これがヤバいぞ”っていう選択眼が大事。
ab:長くシーンの中に居て、その隆盛を見てきた大野さんからみて、シーンを取り巻くメディアについてどう思いますか?
大野:今の雑誌って、ある程度名前が売れている人しか出てないから面白味がないかなって思う事はありますね。今はストリートの見せ方もマーケティング第一になっていて、変にマスを意識してるから読者像が見えにくくなってくるかも。やっぱり広告も絡んでくると、ある程度売れてるものしか誌面に出ないじゃん。それはしょうがないことなんだけど、本当は無名でも“これからこいつがヤバいぞ”っていう人を盛り上げてあげるような役割が雑誌にはあった気がするし、そういうものが今の雑誌にもあったらいいなって思いますね。
大野:今の雑誌って、ある程度名前が売れている人しか出てないから面白味がないかなって思う事はありますね。今はストリートの見せ方もマーケティング第一になっていて、変にマスを意識してるから読者像が見えにくくなってくるかも。やっぱり広告も絡んでくると、ある程度売れてるものしか誌面に出ないじゃん。それはしょうがないことなんだけど、本当は無名でも“これからこいつがヤバいぞ”っていう人を盛り上げてあげるような役割が雑誌にはあった気がするし、そういうものが今の雑誌にもあったらいいなって思いますね。
ab:大野さんが今特に注目しているシーンは?
大野:音楽のシーンだと、今さらなんだけどヒップホップとハードコアがやっぱり面白い。ヒップホップなんて、皆twitterとか使ってて、そういうレベルですごく繋がってて。大手レコード会社の力を借りなくても、“自分たちだけでやるぞ!”っていう意識と勢いがすごくある。でも“今日本のヒップホップがヤバいぞ”って取り上げる人は少ないと思うし、ハードコアなんてもっと無視されている。だってメディアは今頃になってエレクトロで騒いでるじゃない。エレクトロが古いとは思わないけど、4年前の時点から取り上げてなくて、メディアが騒ぎ出したのが今だもん。これだけ定着してからじゃ遅いなあ。スピード感を感じない。結局雑誌の役割はもっともっと変わっていくと思うんだ。iPadで雑誌も出てくるだろうし、twitterにしてもそうだけど、ネットがこれだけ普及した今はオンタイムで皆が情報を共有できる。雑誌なんて取材してから発売まで一カ月かかるからそれだけですでに遅いのに、感性が遅かったらさらに遅いし、そうなると一体誰が読むんだろうって。
大野:音楽のシーンだと、今さらなんだけどヒップホップとハードコアがやっぱり面白い。ヒップホップなんて、皆twitterとか使ってて、そういうレベルですごく繋がってて。大手レコード会社の力を借りなくても、“自分たちだけでやるぞ!”っていう意識と勢いがすごくある。でも“今日本のヒップホップがヤバいぞ”って取り上げる人は少ないと思うし、ハードコアなんてもっと無視されている。だってメディアは今頃になってエレクトロで騒いでるじゃない。エレクトロが古いとは思わないけど、4年前の時点から取り上げてなくて、メディアが騒ぎ出したのが今だもん。これだけ定着してからじゃ遅いなあ。スピード感を感じない。結局雑誌の役割はもっともっと変わっていくと思うんだ。iPadで雑誌も出てくるだろうし、twitterにしてもそうだけど、ネットがこれだけ普及した今はオンタイムで皆が情報を共有できる。雑誌なんて取材してから発売まで一カ月かかるからそれだけですでに遅いのに、感性が遅かったらさらに遅いし、そうなると一体誰が読むんだろうって。

だからこそ、情報をビジネスにしている人は、スピード感が絶対に大切だと思うな。そして、数ある情報の中から選んで、“これがヤバいぞ”っていう選択眼っていうのが問題になってくる。
例えば30代の人がこれを読んで、また何かやる気になってくれたら嬉しい。

FLJ創刊号。表紙はヒカル(BOUNTY×HUNTER)、難波章浩(Hi-STANDARD/ULTRABRAIN)、ティム・アームストロング(RANCID)、ZEEBRA
ab:雑誌(FLJ)をまた始めようと思ったキッカケは?
大野:雑誌に携わっていなかった時期に、例えば音楽の分野だとパンクスプリングの仕事やってると、1万5千人くらい人が入って、“どうよ!”って思うじゃん。でも、メディアは取材に来ないし、なんでだろうって思うワケですよ。(写真左のFLJ 1号目の表紙を見ながら) これなんかはパンクスプリングの時に撮影したんだけど、おれだったらこれ表紙にするのになとか考えちゃうじゃん。て考えると、“やっぱりおれ雑誌が好きなんじゃん”って思って(笑)。それでとりあえず1年間思いっきりやれたらいいなって思ってFLJを始めたんです。雑誌が好きだからもう1回やりたかったんだよね。とりあえず昔みたいに自分で今また現場に出て取材できるのが嬉しいですね。
ab:FLJを通して大野さんがやりたいことって?
大野:いろんな仕事はやっていきたいけど、雑誌は続けたい。雑誌をやっていなかった2年間はちょっと寂しい気がしてて。やっぱり雑誌を看板にするのが好きなのかもしれない。“大野組”みたいなものだよね(笑)。看板は下ろしたくないけど、出版業界が云々っていう感じでもないんだよね。「これ見てよ! カッコよくない?」っていう感じ。
大野:雑誌に携わっていなかった時期に、例えば音楽の分野だとパンクスプリングの仕事やってると、1万5千人くらい人が入って、“どうよ!”って思うじゃん。でも、メディアは取材に来ないし、なんでだろうって思うワケですよ。(写真左のFLJ 1号目の表紙を見ながら) これなんかはパンクスプリングの時に撮影したんだけど、おれだったらこれ表紙にするのになとか考えちゃうじゃん。て考えると、“やっぱりおれ雑誌が好きなんじゃん”って思って(笑)。それでとりあえず1年間思いっきりやれたらいいなって思ってFLJを始めたんです。雑誌が好きだからもう1回やりたかったんだよね。とりあえず昔みたいに自分で今また現場に出て取材できるのが嬉しいですね。
ab:FLJを通して大野さんがやりたいことって?
大野:いろんな仕事はやっていきたいけど、雑誌は続けたい。雑誌をやっていなかった2年間はちょっと寂しい気がしてて。やっぱり雑誌を看板にするのが好きなのかもしれない。“大野組”みたいなものだよね(笑)。看板は下ろしたくないけど、出版業界が云々っていう感じでもないんだよね。「これ見てよ! カッコよくない?」っていう感じ。
願わくば、やっぱりこれを読んで「おぉ! おれもやるぞ!」って、いろんな事の入り口になったらいいなって。例えば30代の人がこれを読んで、また何かやる気になってくれたら嬉しいし。“雑誌版バイアグラ”みたいになったらいいなって思います(笑)。
ab:アジアのシーンについてはどう思いますか?
大野:アジアはストリートシーンにしても日本が辿ってきた道を辿っていると思うし、アジアの人にしてみれば、アメリカを見るより日本を見た方が絶対に参考になるんじゃないかな。逆に日本からも、そういうものを提供したいよね。実際にFLJを配本してくれっていうオファーも多いし、一度行ってみないとなって思っていますね。
ab:アジアの若者に対してメッセージを。
大野:何事も思いっきりやれってことだね。限界なんて無いってことです。
(取材日:2010.5.11)
大野:アジアはストリートシーンにしても日本が辿ってきた道を辿っていると思うし、アジアの人にしてみれば、アメリカを見るより日本を見た方が絶対に参考になるんじゃないかな。逆に日本からも、そういうものを提供したいよね。実際にFLJを配本してくれっていうオファーも多いし、一度行ってみないとなって思っていますね。
ab:アジアの若者に対してメッセージを。
大野:何事も思いっきりやれってことだね。限界なんて無いってことです。
(取材日:2010.5.11)

[INFO]
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大野俊也 オオノ トシヤ
DRAGON ZOE LLC. 代表 / FLJ編集長
■略歴
1964年生まれ、横浜出身。雑誌「Fine」「WARP」の編集長を経て、独立。PUNKSPRING等のフェス、イベント企画制作、国内外の音楽アーティスト・プロデュース、アートディレクター、TV、ラジオ番組の企画など、多方面で活躍中。バンド「DBX」ヴォーカル。DJ OHNOとしても活動。2008年7月30日、フリーマガジン『FLJ(エフエルジェイ)』を創刊。隔月刊の雑誌発行に加えて、クロスメディアを展開中。有限会社ドラゴンゾーイ代表。
■Web Site
FLJ http://www.fljtokyo.com
ブログ http://www.fljtokyo.com/wp/
Twitter http://twitter.com/ToshiyaOhno
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