[愛魂 vol.31] 神山健治 ~「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」シリーズの監督が語る日本アニメの可能性~(1/2)
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未だに熱狂的なファンが多い「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」シリーズや、羽海野チカとのコラボで話題となった「東のエデン」などのテレビアニメ作品で高い評価を得ている神山健治監督。最近では「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」シリーズの第3作目が3D化された、映画「攻殻機動隊 S.A.C. SOLID STATE SOCIETY 3D」も大ヒットを記録している。そんな日本のアニメーション業界の最先端を走っている彼に日本のアニメーションの持つ魅力を語ってもらった。
攻殻機動隊は幅広い年齢にうけるものでありマニアックでもある

神山健治監督(以下神山):そうですね。表現とテーマが結びついているのは感じていたので、うまくいくだろうという思いはありました。電脳化しているサイボーグたちの視点や電脳空間にダイブしていく映像は特にうまく表現できたなと、思った以上の効果があったなと出来上がった作品を観て改めて感じました。
ab:攻殻機動隊が皆に愛される作品でありつづけている理由をどのように考えていますか?
神山:僕がSACシリーズを作り始めた10年前あたりからインターネットの普及が徐々に一般化されてきて、作品で描かれている事が身近な問題として理解できるようになってきたというのが一番の理由だと思います。その中でさらにもっと進んだ社会ではどんな事が起きるのだろうかとか、今現実で起きている問題を誇張してそれをエンターテインメントにしているという点がこの作品の魅力でもあります。刑事ドラマのような一話完結の視聴し易いフォーマットであり、幅広い年齢層に向けて表現する事ができて、しかもそれをマニアックにも描くこともできるというところがきっと皆さんの琴線に触れているんじゃないかなという風に考えています。
一人一人が諦めてしまった時が本当の終わり

神山:作品を作るうえでいろいろと取材をするんですけど、原因というのは一つではなく、複雑な社会構造の中で起きてくる問題なのでなかなか答えを見い出せないんですよね。僕も明確な答えが見つかればもっと作品にカタルシスとして入れやすいんですけど、単純な答えというものはなくて。3シリーズを作って思う事は結局帰って来るところは個人だということ。一人一人が諦めてしまった時が本当の終わりで、映画の最後に、成長した少年たちに問題に立ち向かってほしいというようなセリフがあるんですけど、それが今僕の出せる答えで、一人一人が諦めなければ複雑に絡み合った問題もいつか解決できるんじゃないかと思っています。最近あった都知事選でも、ネット上ですごく盛り上がっていたから投票率も上がるんじゃないかなという期待もあったんですけど、結局はいつも通りで。せっかくネットで声を上げているのに、そういった人たちが、一票を投じてもどうせ世の中は変わらないんだって思ってしまう事が一番いけない事だと思いますね。
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